二人奇譚

連続無差別失踪事件 ページ1

日本の中心都市、陽炎町には警察ともう一つ、自警団が存在する。警察は日本全国で活動しているが、自警団はここ、陽炎町にしか存在しない。
　なぜって？ ここが陽炎町だからさ。この町では人と妖が共存して暮らしているが、警察は人間のもめ事専門なんだよ。だから警察じゃ手に負えない、妖絡みの事件は自警団と警察が協力して解決するのさ。

　ん？ ……話が聞きたいって、お前ねぇ。あいつらが簡単に取材だのに応じてくれると思うかい？ 諦めな。なんでも変人が多いって噂なんだよ。まあ、腕は確かだけどねぇ。

　どこに行けば会えるかって？ 自警団の面々はそこらにいるよ、各区に拠点があるのさ。狐憑きだのは交番じゃなくてそっちに行かなきゃいけないよ。そんなことより、町の名物でもある千年桜を見にお行きよ。桜は散っちまってもう葉になってるだろうけど、立派なのはかわらないよ。

　そういえば、あんた何でこの町に来たんだい？ ああ、観光か。そうだろう。だったら尚更花笠区の千年桜は外せないねぇ。あと町並みの写真も記念に撮ってお行き。外には残ってないだろう？

　いいよお礼なんて。ただのお節介だからねぇ。そうそう、お節介ついでに教えとくよ。あんたさっき自警団について聞いてたけどね、今はほんとにやめときな。最近、妖、人間問わずで失踪事件が起きてんのさ。ただの失踪にしては妙だって、警察がぴりぴりしててねぇ。自警団の人もちょっとばかし怖い顔してるんだ。

　失踪した人の共通点？ さあねぇ……性別や種族には括ってないみたいだけど……ああ、でもみんな学生みたいだったよ。だから最近、夜に出歩く学生はいないのさ。

　え？ 自警団の拠点？ 聞いてどうすんだい、あんた。

　……なるほどねぇ、姪っ子が……。そりゃ心配にもなるってもんさね。けどねぇ……まあ、いい人にあたる事を願ってるよ。この通りを行けばすぐさ。
　それじゃ、達者でね。

壱→

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