【Fischer's】マフィア。２ (ページ4)

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Aside

撃たれた日三週間ほど経って、私は退院日を迎えた。
奇跡的な回復のおかげだ。
本来は、一ヶ月半かかるものが、私は三週間ですんだのだ。

「布川さん退院おめでとうございます。」

看護士さんや担当医が口を合わせてそう言う。
素直に嬉しかったが、早くスパイに戻りたいという気持ちの方が大きかった。
まぁ、何ヶ月か経たなければ活動再開できないんだけど。

「ありがとうございます。」

思っていることを顔に出さないように、看護士さんや担当医に笑顔を振りまく。

「もう、これからは気をつけてくださいよ？先輩。」

スパイだと言うことがバレないように、私の通っている大学の後輩役になっている、結菜と、

「まーったく…結菜ちゃんの言うとおりだぞ、A。」

私の恋人役をしている、尚人。
尚人が敬語じゃないのには、違和感しか感じない。
結菜には全然違和感を感じないけど。

あの日から「お父さん」も、「ボス」も現れることはなかった。
だけど、謎の安心感を持っていた。

「じゃあそろそろ退院時間ですね。」

看護士さんが言って、病室のドアを開ける。

「ありがとうございます。」

そこから、病院の外まで出たところで、看護士さんや担当医が見送ってくれた。

私が尚人の車に乗れば、

「退院おめでとうございます、班長。」

と、二人が声を合わせて言う。

「ありがと。ちょっとボスのとこよらせてもらって良い？」

私がシートベルトをしながら尋ねると、尚人は言う。

「はい、いいですよ。」

走り出した車の中は、沈黙で包まれていた。