狂人短編記録 2冊目

＊マチェットナイフのからかい【国生英明】△ ページ8

***



Aside



『えーっと、あの書類何処だったかなぁ…』



夕刻。翌日提出予定の書類が見当たらず少しやばい…出せなかったら………



「A」



私の名前を呼ぶ声が聞こえたと共に差し出された複数枚重なった書類。顔を上げると国生の兄貴が心配そうにこちらを見ていた。



「整理はちゃんとしとけよー？ごちゃごちゃになっちまうからな」



そう言って私の手のひらに紙の感触がしたのでそのまま受け取ろうとしたその時…



「…おっと」



ひょいっと、書類が高々と上げられる。



『あっ…！』



高く持ち上げられたと思ったらまた目線の高さに書類を戻される。



「ははっ、すまねぇ。お前が可愛くてつい、な。」

『か、からかわないでください…！』

「(本心なんだがな)」



国生の兄貴が心の中で何かを考えている気がしたが今の私には知る由もない。



「あ、国生の兄貴〜。あんまりAをおもちゃにしたら可哀想ですよぉ」

「おー、守若に佐古。どうした？」

「んー、通りかかっただけでぇす。じゃあ帰るぞ佐古ぉ」

「えぇ…！？は、はい…！」



守若の兄貴と佐古君が通り過ぎていった…何だったんだろう。


しばらく2人が去っていった方向を見ていたら急に目の前に影がかかった。

顔を上げると………国生の兄貴が急接近していたみたい。



「目の前に俺がいるのによそ見はひどいぞー？」

『あの…ち、近いです…！』

「仕方ないだろ、こうでもしないとお前は俺を見てくれないしな」



また更に距離が近くなる。
…待って、これこのままだとその、き、キスしちゃう…！？


…と、思ったら急に距離が空き、私の手のひらには書類が乗せられていた。



「………なんてな。んじゃ、そろそろ帰るか。」



帰り道同じだろ？送ってくぜと言う兄貴にまだ言いたいことはあったがまぁいいかと思い私はその背中を追いかける。



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