狂人短編記録 2冊目

＊お前さんが好きなんだ【柳楽和光】△ ページ4

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「A」

『や、柳楽の兄貴…？』

「今、時間はあるか？」

『は、はい…』

「…良ければ2人でご飯にでも行かないか？」



「あの、伊武の兄貴…」

「阿蒜、こういう時は見守るだけにするんだねぇ」



そう言って伊武は阿蒜を連れ自分たちは自分たちで飲みに行くぞと言いその場を後にする。


話をすると、先ほどの状況は柳楽からの誘いに対し少し怯えながら乗るA…という構図になっているのだがAが柳楽に対しあのような接し方になっているのには理由(わけ)があった。




【時は内部抗争前まで遡る…】



『柳楽の兄貴〜！』

「どうした」

『…好きです！』

「そうか」

『むー…どうしたら気づいてくれるんですかー！』



Aは柳楽のことが好きで、毎日のようにアピールしていた。しかし柳楽からのリアクションは肯定なのか否定なのかよく分からない。

最初、自分より若い男は沢山いるから…という理由でそこまで相手にしなかったがそれでもめげない姿に徐々に惹かれていった。


それだけでなく自分に少しでも近づきたい、という理由で人生で一度も握ったこともないであろう日本刀の練習をしたと知った時には愛らしい、と思ったそうだ。


だが時は更に進み、眉済か黒澤どちらかが組長になるかで内部抗争が始まる。

Aは元々黒澤派の兄貴分に拾われた身であり、最初は迷いを感じていたが他の兄貴分の圧力もあったので黒澤派についた。


…だから眉済派である柳楽とは必然的に対立する形になってしまったのだ。





『…無事ですか、来栖の兄貴』



獅子王組のエースにして黒澤派の主力である来栖を助ける形で前に立ちはだかるA。

その手は微かに震えているがやり遂げなきゃという意思がこもっている。

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