▽ ページ18
黒に統一された扉が立ち並ぶ2階にようやく到着した。1階や3階は目がチカチカするほど華やかでキラキラしている、という誰かからの言葉を思い出した。このくらいシックでも私は好きだけど。3回のノックの後、控えめに坂田がうらたの部屋のドアを開ける。
そこには、膝の上にやまだを乗せて机に向かって執務に当たるうらたがいた。窓際に近いその席で太陽の光を浴び、少し眠そうに頭を揺らしていたうらたの目が見開かれた。
「お、嬢･･･と、さかたとセンラか？どうした？」
『んふふ、ごめんねうらた。休憩してたね。』
「いやいいけど。なに、なんでそんな笑ってんの。」
『んーん、なんでもない。』
ちょっと気の抜けたうらた久々に見たかも。眠そうに目をこする姿、猫みたいだなって思ってたけど、何にも変わってなくて安心した。と、同時に込み上げてきた笑みでうらたは怪訝そうな顔をした。
無意識で膝に座るやまだの頭を撫でている。
「そこのくそ･･･んんっ、やまだぬき探してたんですよ。」
「センラ、隠せてねぇから。」
センラの圧からだろうか、やまだちゃんはピクリと耳を動かし、目を覚ました。キョロキョロと周囲を見渡し、自身が大好きなうらたの膝の上であることに安心し再び目を伏せた。
『やまだ〜こっちおいで〜！』
手を広げてそう声をかける。大抵はこの声かけでやまだちゃんは来てくれる。そのはずなんだけれど、今日は一向に来ない。不思議に思って後ろを見たら、般若の形相をした坂田とセンラがいた。
『ちょっと、2人ともやめてよ！やまだが怖がってる！スマイル！』
「なんですの、お嬢。俺らはいつも笑顔やないですか。」
「そーやでー、ほら！」
『そんな怖い笑顔やだよ。』
しゃがんでやまだの目線に合わせて話していたことで、坂田も同じようにしゃがみ、私の首に腕を回して抱きついて離れなくなった。
つまり、やまだは一切近づいてこなくなった。
『うらたばっかりもふもふ堪能しないで！ずるい！交代！』
難しい顔をしたうらたがやまだを抱きかかえながら立ち上がると、やまだは急いで飛び降りてうらたの脚の後ろに隠れた。
『え〜！なんで！！ほら！代わりにさかたあげるから！おいでよ〜！！』
「俺は別にいらねぇからな。」
「なんでやまだと俺等価交換なん！？」
結局やまだちゃんは夜まで私の側に来てくれなくて、坂田とセンラを叱ったためそれからしばらく後ろをひっついて離れなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 726人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
結月。(プロフ) - 定期的に読み返してしまうほど大好きなお話です。もう1年以上更新が止まっていますが、この作品に出会えたことが凄く嬉しかったです。素敵な作品を紡いで下さり本当にありがとうございました。大好きです。 (2023年1月8日 5時) (
レス) @page27 id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - 更新が止まってます！戻ってきてください！続き楽しみに待ってます！(´;ω;｀) (2021年7月5日 17時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
さくらいろ(プロフ) - ゆっこさん» ゆっこさんコメントありがとうございます(^^)大変ゆっくりな更新で申し訳ないのですが、更新は続けていきますよで見続けてくだされば幸いです！ (2020年5月30日 16時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
珠菜(プロフ) - とても面白かったです！登場人物の再現だけでなく、ストーリー構成も魅力的でした。浦島坂田船の皆さんの名前を借りない一次作としても楽しめると思いました!!大好きな小説なので、是非これからも更新頑張って欲しいです。体調にはお気を付けて。応援しています。 (2020年4月24日 1時) (レス) id: 93515d92f9 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 続編おめでとうございます！私今年受験生なんですよ。コロナあるのに。なんでやねん！！って思いましたwこれはおいといて、まーしーがすぐに断ってないみたいなので今ハラハラしてます。抜けないよね！？って思ってます！これからも頑張ってください！ (2020年4月19日 1時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくらいろ | 作成日時：2020年4月7日 1時
