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「貴族のお嬢様もそんなこと考えるんやね。」
『え…?』
開いた口がふさがらなかった。この人は、何を言っているんだ。その笑顔の裏で何を企んで、どこまで私のことを知っているのか。
私が貴族の出だなんて、私を両親から直々に買い取った楼主しか知らない。つまり、それがこの人たちが楼主と繋がりがあることは明白になったわけだ。
さっと血の気が引いていく。わたしは選択を間違えたのだ、と。
『………なにが…。』
「あ、ごめんな、そういうわけとちゃうねん。…あぁ話す内容間違えたな…。ますます溝生んでしまったよな、ほんまごめん。」
饒舌にそう述べた千羅さんにこちらがどう反応したらいいのかわからなくなった。垂れた眉も、瞳も、嘘をついているとは思えなくて、より頭を悩まされた。
『一つ聞いてもいいですか?』
「ええよ。」
『なんで、私を助けたんですか。』
その言葉で、千羅さんは困り顔からやさしい笑顔にゆっくりと表情を変えた。そして、また髪をなでられた。甘い百合の匂いがする。着物の袖から、ほんのりと香る百合は全然嫌な感じがしなくて、安心した。
「俺らは…逃げてきた遊女を時々匿ったり話を聞いたり、そんなところ。さすがに花魁さんが来はったのは初めてやけど。」
『無条件に助けるの?』
「まあ、……………みんな彼奴の被害者やから…。」
『彼奴?…ってまさか楼主様のことですか?そんな口きいたら罰則があるんですよ!?』
撫で続ける腕を掴んで、そう訴えるとぽかんとした後にははっと軽快に笑った。
「俺らはそんなことされんよ。大丈夫。」
『なんでそんなこと言いきれ…。』
「だって、俺ら楼主の子どもやから。」
…………………ゑ?
あの楼主にこんな綺麗な子どもが生まれるなんて、そんな天地がひっくり返ってもないようなことあるわけないわ。何か聞き間違えたのよ。………だめだ、どこをどう切り取ってもその意味にしかならない。
「ただ全員母親はちゃうねん。」
『え?』
「あ…だからと言って仲悪いわけとちゃうし、別にそんな重く考えんでも…。」
『だからそれぞれ別の愁眉さがあるのですね、納得ですわ…。』
「ちょっと待って、金香ちゃんそんな感じでええん?今結構まじめな話しとった気がすんねんけど。」
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さくらいろ(プロフ) - マロンさん» ありがとう(*´˘`*)最近更新する時間を作れることが多くて今頑張ってます!待っててください(^^) (2020年5月30日 16時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
マロン(プロフ) - さくちゃん待ってたよぉぉお!!てか最初の方から好きすぎてやばいのですがどうしましょう!?← え、取り敢えず好きすぎてやばいです……!!!、 (2020年3月22日 21時) (レス) id: 16f9fe16fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらいろ | 作成日時:2020年2月27日 23時