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お客様の酔いを回し、寝る支度をしますと告げて部屋を出る。普段より少しばかりアルコール濃度の高いお酒を出しておいて正解だった。

そう予定は完璧。

背後でピシャリと扉を閉めて、深呼吸をする。


実際、この遊郭の地図は分からない。あの部屋に閉じ込められていたようなものだから。これもきっと楼主の策。私が容易に逃げられないようにするための。



……それがどうした。




それで諦めるほど意思は弱くない。全くの把握ができてないほど馬鹿じゃない。人の出入りや流れで少しは考えることが出来る。


伊達に貴族の屋敷に住んでいたわけじゃない。



ある程度の建物の構造くらいわかる。


でも、不思議だった。私の居た居場所は2階の最奥。この遊郭は3階建て。逃げるのを阻止したければ、最上階の奥に置くはず。

私以上に隠したい“ナニカ”がいる気がする。



そんなこと今は関係ないけど。



早く逃げなきゃ……。


そう思って自分が想定した遊郭の勝手口まで着物の裾を持ち上げて走った。



そのとき、





「全く…今日だと思ってたよ。金香。」






背筋が凍った。


なんで、なんで……!!



目の前に立っていたのは腕を組んで仁王立ちしながら私の行く手を塞ぐ楼主の姿だった。まさかバレてたの?なんで?誰にも何も…!



「お前は身を売るのを嫌がっている、他の遊女よりも執念深く。」


『……。』


「そんなお前がこの逢瀬にすんなりと応じるわけがないんだよ。」




筒抜けだったわけか。そしてその手の中で泳がされてた、だけなんだ。なんだ、そんな単純な…。




『ふふっ、だったらもうなんとしても逃げるしかありんせんね、楼主様。』

「今戻ればなかったことにしてやる。」

『いいえ、これからは屋敷に厳重な警備を置くでしょう。』



そういうと図星だったのか顔を顰めた。楼主のやりそうな事だってこっちは検討がつく。


もうこの機会、逃してはならない。



『わっちは豪華な着物も料理もいりんせん。』


私が口を開くと、彼は後ろに目配せをして、灘やさすまたを持った女たちがぞろぞろと出てくる。


彼女たちは「雨女隊」。脱走を図ろうとした遊女や、未納金の男を懲らしめたり他所の遊郭に浮気をした男に制裁を加えたりする女部隊。


まさか自分がお世話になるなんてね。


私は着物の裾を捲りあげ、膝が出る位置でそれを結びあげた。



『私は、ただ普通の生活がしたい!!』



そう言い放つと、踵を返して、元来た道を走り出した。

弐『最上階の隠人』→←*



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さくらいろ(プロフ) - マロンさん» ありがとう(*´˘`*)最近更新する時間を作れることが多くて今頑張ってます!待っててください(^^) (2020年5月30日 16時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
マロン(プロフ) - さくちゃん待ってたよぉぉお!!てか最初の方から好きすぎてやばいのですがどうしましょう!?← え、取り敢えず好きすぎてやばいです……!!!、 (2020年3月22日 21時) (レス) id: 16f9fe16fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さくらいろ | 作成日時:2020年2月27日 23時

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