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私の手や腰を撫でる手つきが気持ち悪かった。取り繕った表面上だけの笑顔と「また、そんなお上手ね」が常套句。
特に突出したところなんてなく、在り来りなことを軽く持ち上げれば喜ぶ金にものを言わす奴らばかり。
楼主様がお気に入りの私を売ってまで媚びを売りたい相手がそんなことが通用し真に受けてしまう人だ。
ここ一帯の貨物の仲介売買を行う問屋であり両替屋も兼ねる金利業者の『カガヤ』さま。
漢字なんて知らないわ。楼主様からなにか文書を頂いたわけでもないから私とナカトミ様は口頭で全てやり取りしているもの。
『こんにちは、カガヤさま。ようこそおいでくんなまし。「金香」でありんす。』
「なんだい改まって、金香。もう三度目だぞ?」
『そうでありんしたね。』
そう微笑んでもう既に出来上がっているカガヤに酌をする。相手は嬉しそうに盃を持ち上げ、注いだ酒を一気に流し込んだ。一瓶何円の酒だと思ってるんだ。
思わず声に出そうな言葉をぐっと飲み込み、改めて笑顔を纏う。
「お前は本当にこの国の者とは思えぬほどの白い肌と…不思議な目の色をしておる。」
『そう、でございますか…?』
それを言われるのが嫌いだった。
貿易商の娘。家を没落させるような管理のないずさんな金遣いをする父親。そこから想像つくだろう。
父親は渡航先の異国で一斉を風靡していたほどの美女と婚約をした。このご時世珍しい国際結婚。
それが普通じゃないってわかってた。私の容姿はそれを体現していて、腫れ物扱いにされるのが悲しかった。だから、私はこの見た目が嫌いだ。
醜いなんて思ったことはないけれどね。あんな父についてきてしまった母だけど、母は本当に綺麗な人だったから。
まあそんな母も私を売った一人だけど。
.
そばに居た禿達部屋を後にし、私とカガヤだけになった室内で、私は延々と続く彼の話を流しながらも、いつもより倍近い量の酌をした。
『カガヤ様、もう酔っておいでですか?お休みになられますか?』
私のほうに寄りかかって、手にした盃を何度も落としそうになりながら、私に話しかけてくるものだから、痺れを切らしてそう告げてみた。
「そうしようかな。」
と笑ったので、準備しますねとだけ告げて、部屋を後にした。
さあ、ここからだ。
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さくらいろ(プロフ) - マロンさん» ありがとう(*´˘`*)最近更新する時間を作れることが多くて今頑張ってます!待っててください(^^) (2020年5月30日 16時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
マロン(プロフ) - さくちゃん待ってたよぉぉお!!てか最初の方から好きすぎてやばいのですがどうしましょう!?← え、取り敢えず好きすぎてやばいです……!!!、 (2020年3月22日 21時) (レス) id: 16f9fe16fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらいろ | 作成日時:2020年2月27日 23時