壱『鬱金香の断行』 ページ3
身に纏うのは桃色の
置かれた煙管に目もくれず、予定が書かれた紙に目を通す。そして、ふぅと重たく息を吐いた。
ついに来てしまった。
3度目の逢瀬が。
私めのような花魁と会うには段階が踏まれ、1度目は所謂ただの顔合わせ。喋ることも許されない。2度目はようやく花魁側が口を開く。そして3度目には花魁の体に触れることを許される。つまり、そういうことだ…。
売られた時に決めたことがある。
恋を知るその日までこの体だけは清いままでいようと。
だから、3度目の逢瀬に応じてはいけない。
自分で言うのもなんだが、私は楼主に寵愛されていると自他ともに認めている。なんでも、私の人形のような白い肌が気に入ったんだとか。
だから、私が膝に引っかき傷を付けて帰ったときは血相を変えて怒っていた。彼にとっては“商品”を傷つけられた様なものだから、今のなっては納得がいく。
楼主のお気に入りとあらば、そんじゃそこらの男には売らせないものだろう。だから今まで何とか身売りのステージまでには私を送らなかった。
が、今回はそうは問屋が下ろさなかった。
なんでもこの近辺の金利業者のトップの方で、『夜雨の詩』のバックアップをしている。
そんなお偉いさんに気に入られてしまった今、何も手出しができない。
『指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます』
小さな頃禿として着いていた花魁が私と小さな約束をした時にふざけてそんなことを言っていた。
小さく小指を立ててそんなことを思い出した。指を差し出せるような方に出会えるのかしら。私はこの信念を守り通せるのかしら。
だから私は自分で自分に指切りの約束をした。
『逃げなきゃ。』
この檻から逃げなきゃ。
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さくらいろ(プロフ) - マロンさん» ありがとう(*´˘`*)最近更新する時間を作れることが多くて今頑張ってます!待っててください(^^) (2020年5月30日 16時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
マロン(プロフ) - さくちゃん待ってたよぉぉお!!てか最初の方から好きすぎてやばいのですがどうしましょう!?← え、取り敢えず好きすぎてやばいです……!!!、 (2020年3月22日 21時) (レス) id: 16f9fe16fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらいろ | 作成日時:2020年2月27日 23時