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『ごめんなさい…昔から癖で綺麗なものは観察対象になってしまいまして…。』
「俺観察されてたん、そんな理由なん?得体の知れんやつで警戒しとんのかと思ったらそういうことなん?」
『いや今でも警戒はしてますよ。…………ただ男の人でこんな顔綺麗な人お兄様以外に見たことなくて…。』
「後者が本心やろ…ってお兄さんいたん?」
『はい、いましたよ。…両親と一緒に私のこと売りましたけど。』
そう言葉にして、はっと口に手を当てる。案の定、目の前にいる彼はバツの悪い顔をしながら、こちらの様子をおずおずと伺う。
そんなに重く考えなくてもいいのに。なんてさっき彼が言ったことを、そっくりそのまま心の中で消化する。たぶん、これを言っても千羅さんは気にする。多分この人はそういう人。
『だから、私は幸せになるんです。これからのことくらい自分で決めたいんです。』
「………金香太夫は強いねんな、噂で聞くよりもずっと。」
噂?この遊郭にいるのだから、遊女同士の内緒話くらい出回るわよね。彼らがここで相談室もどきのことをしていたのならなおさら、その手の話は出てくるとは思う。そう深く頷けてしまったことがなんと憎らしいか。ただの遊女ならこそっと逃げ出すのも、もっと容易だっただろうに。この容姿、育ちが、何度も嫌いになった。でも、私はこの遊郭で、一番の遊女になってしまったのだから…。
でも、もう私は「夜雨ノ唄」の花魁「金香太夫」なんかじゃない。
そんな私はあの部屋を出るときに殺したんだから。
『もう違うんです。私は“A”です。一番の遊女の金香でも、もう落ちぶれた貴族の娘でもなく、ただの“Aです。』
そういうと数度瞬きを繰り返した千羅は、口元に袖を持っていき、くすくすと品よく笑った。こんな様になることあります? まるで版画の写し絵みたいで思わず目を奪われた。
「かっこええな、あんた。やっぱりここにおったらええよ。彼奴くらいからは守ってやれるから。」
『私、かっこいいって言われるんじゃなくて綺麗って言われたいです。』
「そういうことじゃないんやけど…。なんか、一人妹が増えた感じするな。」
『?妹がいらっしゃるんですか?』
「いいや、弟が一人。」
これがまた物凄く手が焼けるんやわ。なんて、悪態付きながらも、顔つきは優しくて、よっぱど好きなんだろうなと思った。いいな、兄弟愛。………すこし、彼らに交じりたいなとさえ勘違いしてしまうくらい。
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さくらいろ(プロフ) - マロンさん» ありがとう(*´˘`*)最近更新する時間を作れることが多くて今頑張ってます!待っててください(^^) (2020年5月30日 16時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
マロン(プロフ) - さくちゃん待ってたよぉぉお!!てか最初の方から好きすぎてやばいのですがどうしましょう!?← え、取り敢えず好きすぎてやばいです……!!!、 (2020年3月22日 21時) (レス) id: 16f9fe16fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらいろ | 作成日時:2020年2月27日 23時