檸檬の香る部屋 - アンナチュラル -

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「 玉露の深蒸し茶です 」



神倉さんが容れたお茶はすごく美味しくて、二人が味わわずに飲んでしまったのが何だか残念だった。



『 ん、美味しい 』



「 おお、わかってくれる？ 」



『 はい、とても美味しいです 』



満足そうに笑う所長を他所に二人は最後の晩餐、胃の内容物について話している。



内容物的におにぎりとサンドイッチだろう。ただ肉が分からない、グリコーゲン値が牛肉の三倍。



「「「 馬？ 」」」



血液鑑定の結果全身の血液中の赤血球が完全に破壊されていたという。という事は−20℃以下の環境での凍 死が予想される。



久部くんが二人に笑われている間目が合ってしまった私は逸らして俯くことしか出来なかった。





花ちゃんのご両親が見付かった、そう聞いた時にやっと身元が分かったと思ったのに、どうやら人違いだったらしい。



そう言っていた三澄さんの表情を見れば中々に強烈な方だったのだろうと想像がついた。



画してまた名無しのナナコちゃんに戻った。ナナコちゃんの髪に付いていた白い粒は塩、海水だと思われるとの事。



一酸化炭素量があまりに低い。凍死させられ誰かがあの現場に運び入れた、これが一番しっくりくるという結論に至った。



毛利さんたちの捜査の結果、名前は分からずじまい。でも現場に遺書として置かれていた紙は本人が書いたものだと分かった。



しかしナナコちゃんは身元不明で送検されるらしい。この事件に相当な執着のある三澄さんは所長に吠えるほど。



所長に慰めの言葉を掛けられいたたまれない空気になれば三澄さんはバナナを食べだして、



「 あかり、今日車？ 」



『 え？あ、はい 』



「 温泉行こっか 」



『 これから？ 』



「 そう、三人で 」



「 三人で 」



『 私は構いませんけど 』



「 水着持って無いんですけど 」



「「 何で水着？ 」」





「 うわ、染みる〜 」



『 ん〜、気持ちい〜 』



「 あの〜、これは一体 」



「 殺伐とした仕事の間に少しは癒されたいなって 」



キットを取り出せば湯を汲み、紙を濡らす。



ここの湯は世界でも有数、海水の二倍の塩分濃度。鑑識から送ってもらった成分表を見た時、三澄さんと私はここの湯だと確信した。

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