citron 2【アンナチュラル】 (ページ27)

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録画した動画を巻き戻してご遺体の傷を再び確認する。

「この皮下出血、背中の傷に符合してる。これは凶器の刃渡りがあと１センチでも長ければ皮膚を貫通してる。ギリギリ貫通しなかったから、内部の出血が皮下出血として現れた」

『これは殺害現場をしっかりと確認する必要があるね』

そう言い携帯を取り出して電話をかける。

『あ、もしもし？系？あのさ殺害時の状況を調べたいんだけどさ』

電話を掛けた先はUDIラボ。

〖調べりゃいいだろ〗

『そうなんだけど、ミコトも私もここから動けないから車でピックアップしてもらいたいものがあって』

〖なにしてるの？〗

ん？所長？
かすかに聞こえた所長の声に反応しつつ話をすすめる。

『LINE送ったから見て』

〖みんな一体どこで何を…〗

〖クソッ！そっちの方がマシだ！〗

そう言い乱暴にガチャ切りされ電話が切れた。

「中堂さんなんて？」

『来てくれるってよー。でも、明邦でしょ？大丈夫かなー…』

「大丈夫でしょ、中堂さんも大人なんだし。あ、久部君ー中堂さん来てくれるって！法医解剖医３人の知恵が合わされば、解決できる案件は３倍！」

ニコッと微笑み壁に背中をつけるミコトに久部君は私の顔を見た。
キョトンとしつつも白井君が読んでいる小説に聞き覚えがあった為、職員室に先に戻る。

久部は、Aが居なくなってからミコトに声をかけた。

「ミコトさんて…中堂さんと、星宮さんのことどう思ってるんですか？」

「えっ？」

「８年前、中堂さんと星宮さんが自分の妹を殺したって話。もし本当の……」

「殺してないよ」

「もしもの話」

「ねぇ、その話どこで聞いたの？」

「……父親の病院の関係で」

ミコトは壁にもたれかかると溜息をひとつ吐き続けた。

「無責任な噂だよ。二人は、彼女の死に罪悪感を感じてる」

「罪悪感？」

「生存者の罪悪感。家族が災害で亡くなったり、悲しい事件に巻き込まれた人が感じてしまう事がある。亡くなった人と自分を分けたものはなんなのか…どうして自分だけが生きているのか…中堂さん言ってた。
殺した奴は殺される覚悟をするべきだって…Aも同じこと思ってるに違いない…久部君意味分かる？」

久部は、無言になる。

「二人は、犯人を見つけ出して殺すつもり…私は、そんな二人を止めたい」