遅すぎたんだ。【爆豪勝己】 (ページ4)

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後悔したって、もう遅い０３ページ4

　
　
「辛いってば、ホントなんなの」

そんな声が聞こえて、俺は回りを見渡した。
すると木の影、寄っ掛かって泣いていたのは、爆豪とよくいる女。

いつもニコニコとしている印象だったが、泣きじゃくって、なにかあったのだろうか。

「おい」

「っ……あ、えっと、轟くんだよね……？」

ごしごしと涙をこするそいつを見て、自分のよくわからない気持ちが溢れそうになる。

「ご、ごめんね、見苦しいところ見せちゃって。こ、れは……かっちゃんには、秘密に」

「なにかあったのか」

「………うん」

気まずそうにうつむくそいつに、そっと話しかける。

「聞くから、言ってみろ」

「っでも、轟くんには関係ないよね？」

「関係あるないの問題じゃねぇよ。困っている人を助けるのが、ヒーローの仕事だ」

とは言ってもまぁ、これもクラスメイトの受け売りなんだが。

「……わ、私、改治Aっていいます。爆豪くんの幼馴染みで、ずっと前からかっちゃんが好きだったんだけど……言われるのは、暴言ばっかりで。
私が好きだったのは、まだみっちゃんと仲がよかったかっちゃんだから……」

「みっちゃん？」

「えぇと、緑谷出久です。Ａ組の」

なるほど。
爆豪のあだ名、緑谷の「かっちゃん」呼びは、改治が作ったのかもな。

「だから、自分がかっちゃんのこと好きなのかどうかすらわかんなくなってきて……」

「そうか」

俺は改治の頭をそっと撫でる。
詳しいことは知らねぇが、お母さんがよく俺にやってくれたことだ。

びっくりしたような顔をしたあと、再び改治は泣きそうな顔をする。

「ごめん、ありがと……」

「お前は悪くないから、大丈夫だ。たまには思いきり泣いてみろ、楽になる」

「で、でも、」

「でもじゃねぇ。泣き止むまで一緒にいてやるよ」

そのひとことを言った途端、改治の目からはたくさんの涙が溢れる。
今まで我慢してきた分だと考えると、ずいぶんな量だ。

「うっ、うぇぇえええええ！」

―――彼女が泣き止む頃には、空は薄い紫色になっていたが、改治は「ごめん」とは言わなかった。

「ありがと、轟！すごく楽になったよ！」

「ああ、よかった」

……我ながらバカらしいと思う。
向けられた笑顔に恋しただなんて、本当に。
　
　
　