遅すぎたんだ。【爆豪勝己】 (ページ15)

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幼い頃の好意と気持ちページ15

　
　

ある日のこと。

改治が大事にしていた指輪が、消えた。

それは安物で、１０００円にも満たないようなものだったのだが、改治は大切に大切にしていた。
死んじゃったおばあちゃんに貰ったプレゼントだから。と、いつも身に付けていた。

作り物だが、青くてきれいな石がはめこまれている。

「ゆびわが、ない……」

「え？」

「ッ私、探してくる！」

家を飛び出し、遊んでいた公園で探し始める。
そこまで広くはないのだが、草が多く、探しにくいのは事実だった。

「どこ、どこ？」

ぽろぽろと涙を流して、足に切り傷ができても、見つからない。
通っていく人は誰もこちらを見ないし、見たとしても変な目で見られて終わり。

もう夕焼け空がいっぱいに広がっていて、今にでも泣き崩れてしまいそうだった。

「……おいA！なにやってんだ？」

「あ、う、かっちゃんっ……」

そこで現れたのが爆豪、ことかっちゃん。
おつかいの帰りに通りすぎたらしく、手には近所のコンビニの袋が握られていた。

「ゆ、ゆびわがないの……」

「は？あの青いやつ？」

「宝物、なのに、私おとしちゃった……っぐす」

涙が止まりそうにもない改治を見て、爆豪はにかっと笑った。

「俺も一緒に探してやる！」

「ほんとっ！？」

「この公園に落としたのか？」

うん、と言うと、爆豪はすでに探し始めていた。
「俺こっち探すから、Aあっちな！」と。

そうやってかれこれ１時間ほど。
もう景色は暗くなっていて、いつもの改治なら泣いて帰っていただろうが、なぜか全く怖くなかったという。

「！あった、あったぞ！」

「えっ！！」

泥をつけながら爆豪が掲げたのは、たしかに指輪そのものだった。

「やったあかっちゃん！！ありがとうっ！」

「俺にかかればこんなもん、朝飯前だ！」

「これから食べるのは夜ご飯だよ？」

「そういう意味じゃねーよ！ほらっ」

渡された指輪はいつもより光って見えて、改治はまた泣きそうになった。

「泣くなって！ヒーローは泣かないんだ！」

「っう、うん！」

ずびっと鼻をすってこらえる改治を見て、爆豪は「よし！」と満足げに頷いた。

―――次の日からだろうか、改治がかっちゃんに「大好き」だの「愛してる」だの言うようになったのは。

……その指輪は、今でも、ちゃんとアクセサリーボックスに入っていると言うことを、爆豪は知る由もないようだ。
　
　
　