1.2cm ページ4
.
fkr「はい、こっち兎堂さんのね」
「……ありが、とう」
fkr「いいえ」
「っあ、あの……」
fkr「ん?」
「……す、ストラップ、の……お礼、に……映画、行きませんか」
そして彼女は、人への感謝は倍で返すタイプ。
ストラップなんてたかが500円程度なのに、彼女はそんな俺を最近流行りの映画に誘ってくれる。
映画なんて見るタイプじゃない、ということにはなんとなく気づいていた。
なのに俺を映画に誘ってくれたのは、彼女なりのお礼が、それしか思い付かなかったからだろう。
だから俺は、柄にも無く彼女の右手を取って、言ったんだ。
fkr「俺は映画より、家でまったりしたいな。ねぇ、今度うちに来ない?」
恐らく彼女の距離感に引いたりしなかったのは、俺自身も心を開いた相手に対する距離感が、普通よりも可笑しいから。
今だって、普通の女性にこんな誘いをしたら、一発で変な目で見られる。
てか、高校の時やって見られた。
けれど彼女は俺の誘いにパッと目を輝かせて、ある筈もない耳をピン、と立てる。
わー、ウサギみたい。
「い、行きたい……!」
―――これは彼女が家にやって来た日に気づいたことなのだが、彼女は心理的な面でも距離感が可笑しい。
物理的にでも既に可笑しいのだが、彼女は平然と俺が避けた野菜を食べるし、間接キスだってやってのけてしまう。
それはもう、別にそんな意識なんて全く持っていなかった俺ですらたじろいでしまうほどで、思わず「危ないよ」と忠告してしまった。
「……危ないの?」
fkr「んー、危機感とか、諸々」
「?」
俺の忠告に、本当になんのことか分かってなさそうに彼女は首を傾げる。
そこで、俺はもう一つ気づいた。あ、兎堂さん、多分めちゃくちゃ鈍感だ―――と。
今も男の家のソファーでクッションを抱いたままゴロンと寝転がっていて、下はズボンだから良いものの、上はTシャツが捲れて脇腹が見えている。
俺はお世辞にも女性経験が多いとは言えない。故に、それは非常に目に毒だった。
→
867人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白菜(プロフ) - SALTさん» いえいえ、私なんてまだまだぺーぺーなので見つけられなくて当然です。こんな数ある作品の中から私の作品を見つけてくださっただけでも光栄です。fkrさんの小説は他の方もかなり面白いお話を書かれてるので、是非探してみてください!コメントありがとうございました! (2021年4月2日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - 花蓮さん» ありがとうございます! (2021年4月2日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
SALT(プロフ) - 白菜さんの作品を見ながらなんでこんな神作者様と神作品を見つけることが出来なかったんだろうとorz←の形でコメ打ってます((問打の方々ではあまり見ない方の小説でしたが面白かったです!遅くなっていますが完結おめでとうございます(*´ω`*) (2021年3月30日 10時) (レス) id: 17a3f4fea4 (このIDを非表示/違反報告)
花蓮 - 本当に素敵なストーリーでした!福良さん… (2020年9月27日 21時) (レス) id: b11d0cfa2b (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - 白菜さん» そうなんですね(笑)一言一句漏らさないように読んでいたのに(ストーカーかよ)興奮のあまり見逃していたのかと思いました…実は太田さんの方の「おまけ」を見て読み直したくなったんです…。あ、因みに私、2回目どころじゃないと思います、なんなら暗唱できます(やめろ) (2020年9月6日 21時) (レス) id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ