4.0cm ページ11
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Kwmr side
うちには表面上はお互いに不干渉だけど、誰よりもお互いを思っているカップルがいる。
呆れた溜め息を吐いた須貝さんとはあのままオフィスで別れ、僕らは話してた通り回る寿司屋に来ていた。
ファミリーが多いせいか店員さんにはカップルのような扱いをされたが、慣れているので特に気にせず席に向かう。
四人がけの席につくと、早速同僚の兎堂は端末でイクラを五皿頼み始める。
一気に頼みすぎだろ、その小さい体に入るのか、というツッコミは数年前で終わった。
「むらさんなに頼むの?」
kwmr「んー、マグロ」
「トロ?」
kmwr「分かってて聞くな」
「仕方ないから赤身にしといてあげる」
kmwr「おぉ、清々しいほど上からだね」
僕らは出会ってすぐの頃からこの会話のペースだ。
お互いに言葉が少ないからか、その分投げる言葉が多くなる。ラインで言うところの連投みたいな。
この他の人では出来ない彼女との会話が、僕は結構好きだったりする。
一人だけ出来る人物が居るが。
「うーん、美味い」
kwmr「そりゃ良かった」
真顔で端末を弄った彼女はもう満足したのか、タブレットを元の位置に戻して、僕が入れておいた熱々のお茶をずずっと啜りながら飲み始める。
僕と彼女はお互いに年寄り臭い所がある。
運動は足腰が痛くなるからしたくない。
食べるならこってりしたものよりサッパリしたものが食べたい。
甘い飲み物よりお茶や珈琲が良い。
そんな感じ。
kwmr「そういえば、福良とはどうなの」
「んーそれなりに」
kwmr「とっても上手くいってるみたいで良かった」
「耳ある?」
kwmr「一応二個ほど」
だからこそ彼女達カップルのことは、僕にはよく分かる。
須貝さんは心配してたけど、彼女達が普段お互いに不干渉なのは、長年連れ添った夫婦のような余裕が備わっているからだ。
言葉にしなくとも相手が自分を好いてることはよく分かるし、形にしなくとも相手が離れない絶対的な自信と余裕がある。
彼らはこの世に存在する多くの若者カップルとは、また少し変わったカップルなのだ。
kwmr「……変わってるよな、お前ら」
「んー?」
丁度回ってきたイクラの皿を取り、口に運んだ兎堂に僕はそう溢す。
口に物が入って喋れない彼女は、不思議そうな表情で首を横に傾けた。
kwmr「いや、心配要らないなと思っただけ」
この様子だと、僕が彼女達カップルのことでヒヤヒヤすることは、当分無さそうだ。
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白菜(プロフ) - SALTさん» いえいえ、私なんてまだまだぺーぺーなので見つけられなくて当然です。こんな数ある作品の中から私の作品を見つけてくださっただけでも光栄です。fkrさんの小説は他の方もかなり面白いお話を書かれてるので、是非探してみてください!コメントありがとうございました! (2021年4月2日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - 花蓮さん» ありがとうございます! (2021年4月2日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
SALT(プロフ) - 白菜さんの作品を見ながらなんでこんな神作者様と神作品を見つけることが出来なかったんだろうとorz←の形でコメ打ってます((問打の方々ではあまり見ない方の小説でしたが面白かったです!遅くなっていますが完結おめでとうございます(*´ω`*) (2021年3月30日 10時) (レス) id: 17a3f4fea4 (このIDを非表示/違反報告)
花蓮 - 本当に素敵なストーリーでした!福良さん… (2020年9月27日 21時) (レス) id: b11d0cfa2b (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - 白菜さん» そうなんですね(笑)一言一句漏らさないように読んでいたのに(ストーカーかよ)興奮のあまり見逃していたのかと思いました…実は太田さんの方の「おまけ」を見て読み直したくなったんです…。あ、因みに私、2回目どころじゃないと思います、なんなら暗唱できます(やめろ) (2020年9月6日 21時) (レス) id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
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