ご対面 ページ3
後日。私が起きたのは昼過ぎで、路地裏でもわかる表の騒がしさで目が覚めた。
薄く光が窓から差し込み、重たい目を擦る。
あぁ、そういえば昨日はとんでもない依頼を受けたんだった…
目に浮かぶ、あの顔。
横に入ったキズ、悪すぎる血色、捕食者の目。
「…やるしかない、かあ」
ぱちんと自分の頬を叩き、喝を入れる。
寝巻きを脱ぎ、まずはシャワーを浴びようと足を進めた。
蛇口をひねり、少し熱めのお湯が朝の気怠さを流していく。
そういえば、外の騒がしさがいつもより大きかったような。なんて考えながらシャワーを浴び終わり、脱衣所に出てタオルを体に巻きつけた。
濡れた髪に櫛を梳かしたいし、一度部屋に戻ろう。こう見えて髪の毛大事にしてるのよ、私ったら乙女！
すっかり覚醒した脳でスッキリ爽快！鼻唄まで歌っちゃうもんね！
そう上機嫌で部屋の扉を開け中を見る。その瞬間、鼻唄はヒュッという息を吸う音と共に消え去った。
「なっ、なんで海賊がここにぃ！！！」
そこに居たのはなんと海賊さん1人！昨日の人とは違って、身なりからするにキャプテンのようだ。
不意だった上に、まだタオル1枚なんですけど！流石に女として恥ずかしい！！
「こんな路地裏の家にいい女がいるじゃねぇかオイ、ついてるねぇ〜。俺と来い！！」
タオルを抑えてない方の腕を引かれ、体制を崩してしまう。こんな格好で戦うのは正直恥ずかしい。でもやらないと連れて行かれる！
どうやって対処しようか。なるべく恥ずかしくない方法でやらなければ、なんて悶々と考え込む。海賊は痺れを切らすように怒鳴った。というより、怒鳴りかけた。
何故ならその声は、掻き消されたから。
「おい女、座り込んでんじゃ……」
「こんな場所に何か用事か？」
「えっ…」
突如聞こえた低く耳に気持ちよく響く声。
海賊の後ろに立つ大柄な男。
気付けばその男は海賊の首を掴み上げ、まるでミイラのように水分をどこかへやってしまった。
「あ…なたは……」
間違いない。左手の鉤爪、顔のキズ、あの瞳。
まさかこんな会い方をするなんて。
私の目は彼を捉えて動けなかった。髪から水が滴り落ちる。
「おいお嬢さん、というよりお前は……？……殺し屋のA、だな。こんな所で何をしているのかね」
正体すらもうバレてしまうなんて。
この依頼、波乱の予感しかしません。
ねぇ、クロコダイルさん？
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作者名：みかん | 作成日時：2019年8月21日 5時
