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あの少女の声がまた彼方の頭の中で響く。
彼方は剣を横に振る。すると、キャノピーの一部が斬り取とられ、地面に滑り落ちていった。剣はキララの形に戻る。
彼方は腕を伸ばしパイロットの手を無理やり握った。
彼「…僕たちは戦わない…」
『僕たちは戦わない』をアカペラで歌いだした。あえてこの曲を歌うことで、自分を洗脳しようとする歌姫に対抗していた。
自分は戦わない。苦しむパイロットを歌で救いたいという思いをこめて歌い続ける。彼方のキララが激しく輝いていた。パイロットは目を見開いて彼方を見つめている。
彼方の強い思いに反応したキララの輝きはますます強くなって地上を照らした。すると、パイロットは呻き声を上げて目を瞑る。手から力が抜け、ゆっくりと瞼が開く。目に光が取り戻されていて、苦痛の表情も和らいでいた。
茫然としているパイロットに微笑みかける。
彼「もう大丈夫ですよ。さっきは助けてくれてありがとうございます」
礼を言うと背を向け、戦う仲間の元に飛んで行く。パイロットの目に彼方の背が映っている。自分を救ってくれた、キララの光を浴びる彼方は彼の目にとても神々しく見えた。ずっと見つめていたが、意識が朦朧としてゆき瞼が閉じてゆく。
Aもパイロットと同じで、美しい彼方の姿に目を奪われていた。彼方にカナメの姿が被って見える。
A(キレイ……同じだ…)
彼方もカナメも体の内側から、清い魂から放たれる輝きがより美しくみせている。センターノヴァの優子や智恵理、絶対的センターと呼ばれたあっちゃんを襲名した凪沙にも負けないほど輝いて見えた。
―――
少女「………ちっ…。あとちょっとだったのに」
暗闇の中で輝く球体が浮いている。そこにはセイレーン症候群を完全に鎮圧した現場の映像が映っていた。少女は顔につまらないという感情を露わにしながら、撤退する彼方とAを眺めている。
幼女「さすがたかみなに選ばれた者じゃ。集団を纏め上げる者として相応しい強い心を持っておる。お主のつまらん洗脳など効かぬよ」
少女「あの銀髪が余計なことするからよ。黙って私の言うこと聞いてればいいのに…。これだから女は嫌いなのよ」
女性「あら。じゃあ私達のことも嫌いなのかしら?」
女性が口元に穏やかな笑みを浮かべながら不機嫌な少女に声をかけた。
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作者名:空 | 作者ホームページ:http://id38.fm-p.jp/213/7772010/
作成日時:2020年4月9日 7時