【00×マクロスΔ】虹色の歌姫・６ (ページ28)

今日:29 hit、昨日:0 hit、合計:29,408 hit

〃ページ28

彼方はレーザー光線を剣で防いでいると、彼女の背後を飛んでいたDES機が腕を伸ばして捕らえようとしている。彼方が気配に気づき振り向いたのと同時に、彼女に伸びていた腕が爆発した。

彼「！？えっ…」

続けて機体のあちこちを撃ち抜かれ半壊し地上に落ちてゆく。
驚いて辺りを見ると、一体のDES機が離れた所でホバリングしていた。だがよくよく見ると、キャノピー越しに見える中の男性パイロットの様子がおかしい。表情がとても苦しそうだ。

彼(あの機体セイレーン化したDES機？でもなんかおかしい…)
セイレーン化したら暴れて敵味方問わず攻撃するのだが、あのパイロットはそうしていない。空中でカタカタ震えながら停止していて、ミサイルランチャーが装備されている左手を右手で押さえている。
するとパイロットが自分の左手を拳にして操縦桿を握る右手を叩き出した。

彼(！？)

彼方は攻撃を剣で防ぎながら様子のおかしいDES機に向かって飛んで行く。キャノピー越しにパイロットをよく見ていると、しだいに聞こえないはずの声が聞こえてきた。

「やめろ……っ！いやだ……」

という、苦痛に満ちた呟きだった。パイロットの震える左手の指が操縦桿に付いているボタンを押そうとするが、右手で掴み止める。その右手も震えていた。

彼(これ…もしかして暴れたいのを抑えてる！？)

セイレーン化によって自我を失い、破壊衝動のまま破壊行動しようとする自分を抑えているのか。彼方は驚き、信じられない気持ちだった。こんな前例は見たことがない。
パイロットは歯を食いしばり、大量の汗を流しながら右手で左手を思い切り叩いている。彼の脳裏に『僕たちは戦わない』が響いていている。

「いやだ………！」

誰も傷つけたくない。という、悲痛な思いを彼方は感じた。

彼(…父さんを殺した奴や皆を傷つける奴らは許せない。でもこの人は私を助けてくれた。この人はきっと町の人を守る為に来たんだ。でもセイレーン化して、暴れたい衝動を抑えて…)

このパイロットも自分と同じく人々を守ろうと、自分を操る歌と戦っている。守りたい思いが強いからこそ必死に破壊衝動と戦っているのだ。その強い思いに感動し尊敬の念を感じた。

彼「……」

彼方は無言で剣を振り上げた。

―――そう。それでいいの。戦って守るの―――