警察学校時代から完全無欠なあの男に今近づきたくて仕方ない《名探偵コナン》

43 ページ10

降谷side


Aが笑った。
声をあげて可笑しそうに。

棘ばかりだった薔薇の蕾が
ふいに咲き誇って。



Aが伊達を見つけなかったら、
俺はきっと＿＿＿＿＿＿







それなのに当の本人は今、
伊達と親しそうに話していて
俺とのデートかと聞かれたとき

一瞬の隙もなく「違うわ」とか
言ってくれた。

…それに不満を感じてしまう。



少し話をしていたら、
伊達が一緒に居た警部補を
追いかけて走っていったので
俺達も帰ろうと車に乗ろうとすると






・







・






『＿＿＿＿＿＿航くん！！！』



背後で
Aが伊達の名前を叫ぶ声がして。







それに振り向いた俺が見たものは


道路に放り出された
片方のショートブーツと

平衡感覚を失いながら走行する自動車から
間一髪で伊達と共に向こうの歩道に
飛び込んだAの背中

そして…
彼女の髪と共に宙に散り踊る
鮮やかな赤色だった。





降「A！！！」


伊「つ…って…おい！Aちゃん！！
しっかりしろ！」


起き上がった伊達に抱きかかえられた
Aは目を閉じてぐったりとしている。




伊「降谷…Aちゃん、頭から血…！！」

降「…！！」


伊達の手を染めるAの鮮血。

頭部から出血しているのが見えた…
まさか、脳を損傷して……！！



降「伊達！切創を見て、何でもいい、Aに質問して反応を確かめてくれ！俺は救急車を…」




ﾊﾟｼｯ


『………いら、ない』

携帯を操作しようとした俺の手を
Aが掴んだ。




降「A…！！」

伊「Aちゃん！！頭ん中揺れてねえか！？名前分かるか？！」



『……名前は神楽坂A。
平気、サイドミラーに頭ぶつかって…脳震盪おこしてるだけ』

降「平気じゃないだろ…！！頭部から出血して…！」

『うっさいな…頭じゃないし…耳だし』

降「は…？！」



ほら、と髪を片耳にかけたA。

確かに右の耳が傷付いてしまって
出血しているが
頭に切創はなかった。


『いてて…ヒールで走るって慣れてなかったからな…よいしょっ』

降「何してる！動くな！」

『頭治ってきたし。私の治癒力なめんな』

降「そういう問題じゃない！脳震盪は安静にしてないと…」




『＿＿＿＿……変なの。』
　

降「は…！？」






・






『…降谷 どうしちゃったの？』

44→←42

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す