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「月満つれば則ち虧く、か」
「なにそれ」
親友の出久のふとした呟きに、僕は聞き返した。 聞き慣れない言葉だ。 出久は昔から独り言が多い。 彼は先程、かの伝説のヒーローオールマイトに呼び出されて話をしていたのだから、そこで言われた言葉なのだろうか。
「月満つれば則ち虧く……」
「だから、なんだよその言葉」
返事はない。 出久はブツブツとまた自分の世界へと入っていく。 いつかこいつスリにあったって気づかないんじゃないのかな。
「……月満つれば則ち虧く……」
「出久？」
痺れを切らして肩を叩く。 出久はこれでもかと言うほど肩を弾ませ、びっくりした表情をした。
「う、うえっ？！ な、何？！」
「また無自覚か。 口に出してたよ、考えてる事」
出久は慌てて口に手を当てた。 彼の悪い癖だ。 思慮深いというか、生真面目というか。 彼はよく、ブツブツと呪文のような独り言を言っているのだ。 本人に自覚が無いことが殆どなようで、中学時代は授業中にもやっているのを見た。
「月満つれば則ち虧くって何なのさ」
「ええ……べ、別に大したことじゃないよ、物事には必ず衰退や変化があるって事だよ」
「へえん、オールマイトに言われたんか」
「い、いや、別に」
言われたのか。 別にオールマイトに言われたからと言って、僕は何もしないのに何故出久はうやむやにしたがるのだ。
この間からそうだ。 出久は僕の親友の癖、隠していることが多すぎる。 何かあった？ と聞いても何でもないと笑顔で返す。 何年君の隣にいると思ってんだ、馬鹿。 まあ僕も出久に隠していることがあるから、お互い様なのだけど。
その時、ふわりと焼けるような甘ったるい匂いがした。 同時に、目の端に写るのはもう1人の幼なじみの勝己。
勝己は僕らに目もくれず、通り過ぎようとしていた。 僕らは丁度そこら辺の石ころ、すれ違っても手を振ったりなどしない。 そのはずなのだが、僕はこの先の彼がやる行動が分かっていた。
今まさに、勝己が僕らとすれ違おうとする。 そっと、勝己は出久に視線を向ける。 怒鳴ってばかりの彼とは正反対な、驚くほど静かな目で。 予想通りだった。 その視線はすぐに出久から外れ、勝己は元に戻った。
彼はそれを、うんと、さり気なくやったつもりだったのだろう。 しかし僕は分かってしまった。 僕は出久の1番近い所にいるのだから。 出久が気づきもしない彼の切なげな視線に僕は気づいている。
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アイト - 好きな感じの、話です！続き、待ってます。頑張ってください！ (2018年4月1日 18時) (
レス) id: 28880c114b (このIDを非表示/違反報告)
かやん(プロフ) - けいとるさん» コメントありがとうございます！ 頑張ります！ (2017年10月2日 19時) (レス) id: fbec895554 (このIDを非表示/違反報告)
けいとる - 面白いです！ 頑張ってください 応援してます!! (2017年9月26日 20時) (レス) id: a21381c293 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かやん | 作成日時：2017年9月24日 15時
