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「っもう2度と、私達に関わらないでください、では!」
ツー、ツーと、無機質な電子音が流れた。しまった、流石にからかいすぎたか。夏油傑は焦ったような怒ったような声だったので、今のからかい方はかなり悪質だったかもしれない。
そう、夏油傑。五条悟の隣に居るのは、この世界でも彼なのだ。唯一無二の、五条悟と同じ生き物。
私がどれだけ願っても叶わなかった、対等の存在。
「A、さん?そのぉ…大変そうでしたけど、大丈夫ですか?」
「あぁ、うるさくてごめんなさい。ちょっとね」
かなり騒がしい通話だったせいか、運転している補助監督に心配されてしまった。
謝ってからフッと後部座席に深く沈み、私は窓の外の街の灯りを見つめる。その景色は前世と変わらないけれど、その見方は180度違う。
昔、五条悟から聞いた事がある。「最強になって、世界が静かになったように感じる」と。彼にとっては何気ない一言かもしれない。けれど私にはその言葉と雰囲気が印象的で、今日に至るまで覚えているのだ。
ね、今ならその感覚、よく分かるよ。
「…なんだかAさん、嬉しそうですね」
「……そう見える?」
「はい。なんとなく」
ぼんやりとした声色でにこにこと笑う補助監督。普段私は私生活を誰かに話したり、公開しないからか、機嫌がいい理由が気になるようだ。話の流れのまま、少しからかう気持ちになってぶっちゃけた。
「あはは…実は、好きだった人と再会できてさ」
目を伏せながら笑みを浮かべてそんなことをボヤいてみると、数秒の沈黙の後、補助監督は「ええええ!?」と大きな声で驚いた。
「Aさっ、え!?そんな御相手がいらっしゃったんですかあ!?」
「あはははっ、声おっきい」
「えっ!?すんませっ」
「ほら、ちゃんと前見て運転して。事故るのは勘弁だよ」
「いや、でもっ!」
あたふたしている補助監督の様子があまりにもおかしくて、私は堪えきれず笑いを零した。そんな私を見て、補助監督の顔はだんだんと曇り始める。そして眉を顰めながら言われた。
「……もしかして、嘘つかれてます?」
「どうだろうね」
「それ、100%嘘ついてる時の返事じゃないですかぁ…あーもう、びっくりした!」
そんなに驚かれるとは心外だ。そして嘘だと思われるのも。
頬杖をつきながら通り過ぎていく街並みを眺める。すると少しだけ切なさが込み上げてきたので、私の情緒はおかしくなってしまったみたい。早く終われ、夜。
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作者(プロフ) - ぽぽさん» ありがとうございます😭こんなにも嬉しいお言葉をいただけるなんて感激です🥲なかなかの不定期更新ではありますが、これからもどうぞよろしくお願いいたします☺️ (2月26日 0時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - 作者さん» 繰り返しコメントすみません🙇♀️この作品から作者様の書かれるお話に興味を持ち他の作品も拝見したのですが、どれも良い意味で読みやすく、言葉遣いもストーリーも好みに刺さりました ; ;素敵な作品を創って下さりありがとうございます💖 (2月24日 23時) (レス) id: cce9129f81 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 星屑さん» コメントありがとうございます。一風変わった設定を使いたいと思いこの作品を作りました!これからも楽しいと思っていただけるよう頑張ります! (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - ぽぽさん» コメントありがとうございます。内容は自分が納得ができるまで頑張って書いているので、お褒めいただきとても嬉しいです!これからも応援よろしくお願いいたします☺️ (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - 今までにないような作品で読み進めるのが楽しかったです!更新楽しみにしています🥰 (2月21日 5時) (レス) @page15 id: e29b44e719 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年2月18日 0時