45 ページ45
・
「誰に言ってたんだよ」
本当は聞いてはいけなかったのかもしれない。だが深夜の時刻が、この女の纏う空気が、俺の興味がそうさせた。言い訳をするならそう。
AAは口を噤む。だが少し沈黙した後、ゆっくりと答えた。
「…好きな人、かな。死んじゃってさあ」
「…わり、聞いて」
「いや、もうずっと前のことだからね、忘れたいんだけど」
そんな風に自嘲されると、何も言えない。にしても、AAが好きな人、誰だよ、ぜんっぜん想像できねぇ。
こんな人間離れした女にも、惚れた腫れたがあるんだな、という稚拙な感想だけが出てくる。
「…飯、冷蔵庫だから」
「ありがとう、ごめんね、帰るのが遅くて」
「別に」
「いつもありがとう。美味しくいただくね」
にっこりと笑みを浮かべ、AAはそう告げた。
それから自分は部屋に戻り、ベッドへと潜る。寝ようと思ってもなかなか寝付けない。
それくらい衝撃だった。初めてあの女が、本当に人間だったんだと気づいたような感覚。
リビングの方から聞こえる音だけを聞いて目を瞑る。眠れない、と思っていたが、その音がだんだん心地よくなっていき、気づけば深い眠りに落ちていた。
翌朝、AAは仕事に朝早くから出かけて行った。俺が起きるよりも早く。家のどこにも、あの女がいた痕跡が残っていなくて、夢だったんじゃないかとも思う。
けれど唯一、キッチンの流しに、水を切って乾かしてある皿が置いてある。
AAは確かに、存在しているらしかった。
135人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
作者(プロフ) - ぽぽさん» ありがとうございます😭こんなにも嬉しいお言葉をいただけるなんて感激です🥲なかなかの不定期更新ではありますが、これからもどうぞよろしくお願いいたします☺️ (2月26日 0時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - 作者さん» 繰り返しコメントすみません🙇♀️この作品から作者様の書かれるお話に興味を持ち他の作品も拝見したのですが、どれも良い意味で読みやすく、言葉遣いもストーリーも好みに刺さりました ; ;素敵な作品を創って下さりありがとうございます💖 (2月24日 23時) (レス) id: cce9129f81 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 星屑さん» コメントありがとうございます。一風変わった設定を使いたいと思いこの作品を作りました!これからも楽しいと思っていただけるよう頑張ります! (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - ぽぽさん» コメントありがとうございます。内容は自分が納得ができるまで頑張って書いているので、お褒めいただきとても嬉しいです!これからも応援よろしくお願いいたします☺️ (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - 今までにないような作品で読み進めるのが楽しかったです!更新楽しみにしています🥰 (2月21日 5時) (レス) @page15 id: e29b44e719 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:作者 | 作成日時:2024年2月18日 0時