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「ま、気の所為ならいいんだけど」
五条悟はそう言って、背もたれに体重をかけた。私の顔をじっと見つめたまま時折首を傾げ、自分の記憶を頑張って辿っているようだ。
私は定食を食べることに専念して、視線を無視しながら口を動かす。
「…いや、やっぱどっかで見たことある気がすんだけど」
「……そう?」
白米を運ぶ手をとめて、五条悟をじっと見つめた。まるでこの人だけ時間の流れから外れているような、私と年齢が違うだけなのに、それが酷く虚しい。まぁ実際、彼は歳も大してとらなかったんだけど。
18歳の五条悟は、前世と同じ見た目で私を怪しむ。私は前世と違ってすでにその齢は通り過ぎた。
なんでこんなところで、溝を作るの、神様。
「俺、記憶力いいほうなんだけどな」
「へぇ、そんなに影薄いかな、私」
「いや。むしろ濃い。なんかこう、見た目じゃなくて…一般人じゃないオーラっていうの?それがある」
「はは、褒め方独特。まぁこれでも鍛えてるからね」
「ふーん、全身黒ずくめだから分かんなかった」
鼻で笑う五条悟に、私はにっこり口角を上げる。仕返しをしてやった、と言わんばかりの言い方に釘を刺したかったので。
「職業柄、目立たない服装が好ましくてね。普通の服も着るんだけど、身体を動かすからさ、伸縮性があった方がいいんだ」
「こっわ。オネーサンさ、堅気の人間じゃねーだろ。もしかしてヤのつく仕事?」
「“ヤ”はつかないかな。これでも一応公務員だし」
「じゃ、警察?」
「ううん、違う」
呪術師を知らない五条悟とはこれいかに。前世の伊地知くんが聞いたら卒倒しそうだ。
怪訝な顔を浮かべている五条悟の目の前に、おばちゃんが頼んでいた拉麺を置いてくれた。「どうぞ」と一言声をかければ「…っす」と小さな声で何か言った後、割り箸を割る。
そして1口、美味しそうに麺をすすった彼は期待に満ちた顔でレンゲを使ってスープも飲んだ。
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作者(プロフ) - ぽぽさん» ありがとうございます😭こんなにも嬉しいお言葉をいただけるなんて感激です🥲なかなかの不定期更新ではありますが、これからもどうぞよろしくお願いいたします☺️ (2月26日 0時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - 作者さん» 繰り返しコメントすみません🙇♀️この作品から作者様の書かれるお話に興味を持ち他の作品も拝見したのですが、どれも良い意味で読みやすく、言葉遣いもストーリーも好みに刺さりました ; ;素敵な作品を創って下さりありがとうございます💖 (2月24日 23時) (レス) id: cce9129f81 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 星屑さん» コメントありがとうございます。一風変わった設定を使いたいと思いこの作品を作りました!これからも楽しいと思っていただけるよう頑張ります! (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - ぽぽさん» コメントありがとうございます。内容は自分が納得ができるまで頑張って書いているので、お褒めいただきとても嬉しいです!これからも応援よろしくお願いいたします☺️ (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - 今までにないような作品で読み進めるのが楽しかったです!更新楽しみにしています🥰 (2月21日 5時) (レス) @page15 id: e29b44e719 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年2月18日 0時