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笑いすぎたせいで目尻に溜まった涙を拭う。
ひとまず気持ちを落ち着かせて、私は1つ咳払いをした。
そして確認のために聞く。
「芸人ってお笑い芸人…だよね?」
ムスッとした顔で頷く五条悟に顔を綻ばせながら言った。
「意外すぎて笑っちゃった。ごめん。凄くいい夢だと思うよ。そりゃ親御さんも反対するわ」
「…そーかよ」
「うん、でも私は賛成する。どうか楽しんでね」
前世で出来なかったこと、全部取り戻すくらい良い人生送ってよ、五条悟。
あんな自由気ままな風に過ごしてたけど、思い返せば全ての責任は彼が背負って、そうして死んでしまった。最強ってそういうもんだよね、と笑って言ってのけるのが君らしいんだろう、たぶん。
きっと同情して欲しかったわけじゃないんだろうし、私は何も言わなかった。言えなかった。その発言が、私をより凡人たらしめる気がして。
「そっか、いいな、うん。不完全燃焼はやめてよね」
「…経験談?」
「ふふ、私じゃなくて、私の大事な人のだよ。…それで、結局どれくらいお金に困ってるの?食生活もままならないほど?大学にはこれからも通い続けられるの?」
気になったことをそのまま聞いてみると、五条悟は気まずそうに目を逸らし、黙りこくる。が、私のしつこさを思い知ったからか少しして口を開いた。
「ぶっちゃけ、どっちもヤバい、と思う。飯はバイトで何とか。大学は…多分そのうち退学になる」
「あちゃ、それは痛いね。バイトしたって他にも生活費はかかるし」
「ん、だから掛け持ち考えてる」
「ふーん、なるほどなるほど…じゃあさ、私の元で働かない?」
「…は?」
元々、五条悟のことは庇護下に置こうと考えていた。勝手に死ねないように、呪いに殺されないためにも。ただ彼には警戒されている。きっと、夏油傑にも口酸っぱく言われたのだろう。
でも、引き止めるのはお金でもいい。何がなんでも、見えるところにいて欲しいのだ。
「私、忙しすぎて家になかなか帰れないから、誰か家を管理出来る人欲しかったんだよね。他のバイトよりよっぽどいい額払うから、ハウスキーパーとしてうちに来てよ」
「はうす、きーぱー?」
「家政婦的な?あ、そんな堅苦しいのじゃなくて、ただ住んでくれればいいの。定期的に掃除とかしてもらえたらそれで。生活費もこちらが負担するから」
「いや、え?」
五条悟は困惑した様子で、目を点にしていた。
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作者(プロフ) - ぽぽさん» ありがとうございます😭こんなにも嬉しいお言葉をいただけるなんて感激です🥲なかなかの不定期更新ではありますが、これからもどうぞよろしくお願いいたします☺️ (2月26日 0時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - 作者さん» 繰り返しコメントすみません🙇♀️この作品から作者様の書かれるお話に興味を持ち他の作品も拝見したのですが、どれも良い意味で読みやすく、言葉遣いもストーリーも好みに刺さりました ; ;素敵な作品を創って下さりありがとうございます💖 (2月24日 23時) (レス) id: cce9129f81 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 星屑さん» コメントありがとうございます。一風変わった設定を使いたいと思いこの作品を作りました!これからも楽しいと思っていただけるよう頑張ります! (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - ぽぽさん» コメントありがとうございます。内容は自分が納得ができるまで頑張って書いているので、お褒めいただきとても嬉しいです!これからも応援よろしくお願いいたします☺️ (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - 今までにないような作品で読み進めるのが楽しかったです!更新楽しみにしています🥰 (2月21日 5時) (レス) @page15 id: e29b44e719 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年2月18日 0時