4 ページ4
・
「ごめんなさい、面白くってつい」
「やだ五条ちゃん。恥ずかしいわね、お客さんに笑われちゃったわ」
「…ちっ」
舌打ちをした五条悟とおばちゃんの方に、私は少し大きめの声で告げた。
「お姉さん、私が彼の分も払います」
「はあ?」
「あらあらお姉さんだなんて」
恥ずかしそうにするおばちゃんを横目に、五条悟は眉を顰めて私を怪しむ。
他人の分の代金まで払うなんて、頭のおかしい奴。そう言いたげな目だ。けれど五条君、きみのこと、私は前世から知っているからさ。
「遠慮しないで、君。良ければ話し相手になってよ」
私のその一言にムッとした表情を浮かべる、が、五条悟に逃げ場は無い。無一文にはどうすることもできないのだから。
私の言葉に観念して、五条悟は不満げな顔で私の目の前に来て椅子に座った。
「チャーハンだけじゃ足りないんじゃない?食べ盛りでしょう。私が奢ってあげる」
「…別に」
「そう?てかいくつなの、きみ」
「……18」
「へぇ、じゃあやっぱり食べ盛り育ち盛りだね。ラーメンとかどう?」
「いらねぇ、です」
「あ、違う違う。気持ちのいい食べっぷりが見たいだけだからさ。いい?食べれないことないでしょ?」
「…まぁ」
五条悟のその言葉に、私はおばちゃんを呼び付けてラーメンを頼んだ。五条悟にご飯を奢るという何とも奇妙な世界に、私は調子に乗っていたのだと思う。
そうして今度は自分の青椒肉絲に箸をのばしモグモグと口を動かす。すると不意に五条悟が言った。
「オネーサンさ」
「っひ、お姉さん!?…ふ、あはははは!」
「何がそんなに面白いわけ…?」
「ごっ、ごめんごめん!つい!あはは!」
五条悟にそんな呼び方をされるとは思わず大笑いした。確かに私は前世とは違って彼より年上だが、違和感しかない。
「で、なに?」
「いや…アンタと俺、どっかで会ったことある?」
その一言に、私は笑みを浮かべたまま固まる。その後に付け加えられた「なんか見覚えあんだけど」の言葉に、行き場のない感情が溢れ出しそうになった。
慌てて何も知らない体で取り繕う。
「…あー、なに、そうやって口説くのやめてよね」
「はぁ?口説いてねぇよ、調子乗んな」
「ごめんって。身に覚えがなくてつい」
動揺を悟られたくなくて、目を合わせられなかった。そのまま私は食べ物とだけ見つめ合う。どっかで会ったことある、だけなんて、薄情だな。
135人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
作者(プロフ) - ぽぽさん» ありがとうございます😭こんなにも嬉しいお言葉をいただけるなんて感激です🥲なかなかの不定期更新ではありますが、これからもどうぞよろしくお願いいたします☺️ (2月26日 0時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - 作者さん» 繰り返しコメントすみません🙇♀️この作品から作者様の書かれるお話に興味を持ち他の作品も拝見したのですが、どれも良い意味で読みやすく、言葉遣いもストーリーも好みに刺さりました ; ;素敵な作品を創って下さりありがとうございます💖 (2月24日 23時) (レス) id: cce9129f81 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 星屑さん» コメントありがとうございます。一風変わった設定を使いたいと思いこの作品を作りました!これからも楽しいと思っていただけるよう頑張ります! (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - ぽぽさん» コメントありがとうございます。内容は自分が納得ができるまで頑張って書いているので、お褒めいただきとても嬉しいです!これからも応援よろしくお願いいたします☺️ (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - 今までにないような作品で読み進めるのが楽しかったです!更新楽しみにしています🥰 (2月21日 5時) (レス) @page15 id: e29b44e719 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:作者 | 作成日時:2024年2月18日 0時