28 ページ28
・
第一印象は、寺かと思った。
やけにデカい建物が並ぶ敷地。ここに来るまで随分と山を登った。事前の説明によると、ここは“東京都立呪術高等専門学校”という、学校らしい。
「よく来たね。大変だったでしょ」
そう笑って前を行くのは、会うのは3回目の、全身に黒い服を纏った女。やっぱり、歩き方から常人とは違う身体の出来を感じさせる。要するに、“怒らせたらまずそうなタイプ”だ。この女だけは絶対に誰も勝てない、初めて会った時ですらそう直感した。
それと同時に、懐かしさをいつも覚える。初対面だというのに、隣にいると落ち着いてあくびまでしてしまいそうなくらいに。
だから逆にそれを警戒して、慎重に接している。
「…別に。タクったし」
「そう、なら良かった」
俺の無愛想な様子に何も思わないのか、変わらずにこにことしてご機嫌な女、基、AA。
パッと見、どこにでもいる平凡な人間だ。けれど生で見れば何故か気圧される。
俺はそういう、他とは違う人間を見極めるのが得意だ。そして、AAにはまさしくその違いがはっきりと浮き出ていた。
「説明無しに1週間放置してごめんね。後始末があって、急に来てもらうにはちょっと慌ただしくしてたから」
「後始末って？」
「うーん、まぁ、今回ちょっと怒られたからね。自分勝手に行動しちゃったから、そのケジメをつけに」
「けじめ」
「小指を取るとかじゃないから安心して？そんなことしたって、うちの上層部には効かないし」
冗談っぽく笑っているが、こっちは全く笑えない。とにかく普通の世界とは違うところで生活をしてる人類ということだけは分かるけど、ぶっちゃけ1週間前の人外っぷりを見せられたらこんな反応にもなるだろ。
「あのさ」
「なあに？」
「A、サンは」
冷や汗が背中をつたる。自分が既に、敵の腹の中にいるような気がした。
「…本当に、何モン？」
俺の質問に、AAは少し寂しそうな笑みを浮かべて、目を伏せる。そして、口を開いた。深海のように静かな声で。
「私みたいなの、呪術師って言うんだ。それで多分、私はこの世界で1番強い呪術師」
台詞とは程遠い哀愁を感じる言い方。
この人と、なぜこの場でこんなことになっているのか、それは例の1週間前まで遡る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 135人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
作者(プロフ) - ぽぽさん» ありがとうございます😭こんなにも嬉しいお言葉をいただけるなんて感激です🥲なかなかの不定期更新ではありますが、これからもどうぞよろしくお願いいたします☺️ (2月26日 0時) (
レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - 作者さん» 繰り返しコメントすみません🙇♀️この作品から作者様の書かれるお話に興味を持ち他の作品も拝見したのですが、どれも良い意味で読みやすく、言葉遣いもストーリーも好みに刺さりました ; ;素敵な作品を創って下さりありがとうございます💖 (2月24日 23時) (レス) id: cce9129f81 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 星屑さん» コメントありがとうございます。一風変わった設定を使いたいと思いこの作品を作りました！これからも楽しいと思っていただけるよう頑張ります！ (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - ぽぽさん» コメントありがとうございます。内容は自分が納得ができるまで頑張って書いているので、お褒めいただきとても嬉しいです！これからも応援よろしくお願いいたします☺️ (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - 今までにないような作品で読み進めるのが楽しかったです!更新楽しみにしています🥰 (2月21日 5時) (レス) @page15 id: e29b44e719 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：作者 | 作成日時：2024年2月18日 0時
