最強がいなくなった世界

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10月31日、渋谷。五条悟は放たれた改造人間およそ1000体を299秒で鏖殺した。
今世でそれが出来るやつがいたとしたら、最強や化け物なんてレベルじゃない。神か仏か、あるいは閻魔様しか出来ぬ所業と言われるだろう。


「…それに比べたら、ね」


私のやっていることなんてままごとと大差ない。呪いの数は多いと言ったって100もいないし。
ただ、焦りはあった。未だ五条悟を見つけられていないのだ。

SOSを出してくれれば人を見つけやすいが、帳の中の人間は例外なく眠っている。


「(…ん？待って、私、この街に五条悟がいる前提で戦ってるけど、そんなの保証されてなくない？)」


ふと立ち止まり、顎に手を当てる。焦りすぎてどうやら気が狂ったようだ。そうじゃん、ワンチャンいないよね。

ふぅ、と息を吐いて、後ろから襲ってきた呪霊を祓う。今私は憂鬱な気分なんだから、放っておいてほしい。もしこれで五条悟が何も巻き込まれていなかったら、それこそ骨折り損のくたびれもうけではないだろうか。

あーバカバカしい。いや、一般市民を守るのも大事なお仕事、というか普段はソッチがメインなんだけど、私の思う命の天秤やらトロッコ問題の回答はズレまくってるから仕方がない。正確には狂わされたんだけど。今世で出会わなきゃ、こんな思考には陥っていないし。


「…まぁ、いるもいないも確定していないんだから、街全体をしつこく見るか」


独り言を吐いたって、誰にも拾ってもらえない。

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