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「お客さん?どうしたの?」
「あ、いえ何も。すみません」
立ったままでいたせいか、おばちゃんに心配されてしまった。私は慌てて席につき、今の状況を整理する。
五条悟といえば、呪術界の頂点に君臨する男。私の仕事“呪術師”の仲間達の中で、彼を知らない人はいない。
けれどそれは、あくまで“前世”の話だ。
この世界に、最強である五条悟はいない。
なんなら今この瞬間まで、五条悟という存在すらいないものだと思っていたぐらいだ。
呪いを扱う小さな界隈において、五条悟という名は存在しないことはずっと前から知っている。なぜなら調べたから。なんなら五条悟も、九十九由基も、夏油傑も、乙骨憂太も。
特級術師、そして有力な1級術師や、能力が優れている人材のことは片っ端から調べてある。そうしてわかったことは、前世で活躍していた人間はことごとく呪いとは無縁だということ。
私の知人はほとんど呪術界から姿を消し、残っているのはあまりよく知らない聞いたことのある術師のみ。後は前世で会ったこともない人間がこの世界では呪術師を生業としていた。
だから本当は、この世界を前世と呼びたくはない。まるで前世というより違う世界線のような、気味の悪いバランス。
しかし、誰よりもそのバランスを崩しているのは私という存在自身であった。
「すみませーん、注文お願いします」
「はーい」
おばちゃんを呼んで、メニュー表を指差しながら注文をする。
「この
「青椒肉絲ね、かしこまりました。お水はそこにあるのをお好きにどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
おばちゃんが去った辺りで、水を取りに行くために立ち上がる。そのついでにもう一度、五条悟であろう人物を盗み見た。
うん、間違いなく、五条悟だと思う。私は彼の顔を10年以上見ていた仲だ。なぜなら高専時代からの同期、そして卒業後も同じ高専の術師として働いていたから。
私が彼を、間違えるはずがないのに。
「(…あの様子だと、あっちは私を覚えてないんだな。うわ、ムカつく、ヒトの人生狂わせといてこの野郎)」
多少の怒りを覚えながらも、それをぶつける先はないわけで。席に戻ってから水をグビっと飲み、渇いた喉を潤した。
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作者(プロフ) - ぽぽさん» ありがとうございます😭こんなにも嬉しいお言葉をいただけるなんて感激です🥲なかなかの不定期更新ではありますが、これからもどうぞよろしくお願いいたします☺️ (2月26日 0時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - 作者さん» 繰り返しコメントすみません🙇♀️この作品から作者様の書かれるお話に興味を持ち他の作品も拝見したのですが、どれも良い意味で読みやすく、言葉遣いもストーリーも好みに刺さりました ; ;素敵な作品を創って下さりありがとうございます💖 (2月24日 23時) (レス) id: cce9129f81 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 星屑さん» コメントありがとうございます。一風変わった設定を使いたいと思いこの作品を作りました!これからも楽しいと思っていただけるよう頑張ります! (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - ぽぽさん» コメントありがとうございます。内容は自分が納得ができるまで頑張って書いているので、お褒めいただきとても嬉しいです!これからも応援よろしくお願いいたします☺️ (2月22日 14時) (レス) id: 371b148e61 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - 今までにないような作品で読み進めるのが楽しかったです!更新楽しみにしています🥰 (2月21日 5時) (レス) @page15 id: e29b44e719 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2024年2月18日 0時