【五条悟】参・控えめに言って生きてぇ

1 ページ1

・






夏休み中、高専に折角来たというのに、五条悟と会ってちゃんと世間話をする時間は無かった。
とにかく術師は皆大忙しで、繁忙期というのがどれだけ大変なのかさらに実感する毎日だ。
私は勿論呪いと対峙するようなことはしないので蚊帳の外だけど。しゃーないよね、それに夏休みだし。

そう言い訳して、自分の時間を自分だけに使う有意な生活を過ごしていた。が、癖というのは案外厄介なもので、働かないということがどうにも落ち着かない。趣味も無い私には、暇というのがあまりに堪えた。

ので、高専に駐在している寮母さんのお手伝いをすることにした。
急な展開でよく分からないと思うけど、きっかけはごく単純。
高専を彷徨いていたら美味しそうな匂いがしてそちらに近づいたのが寮母さんとの出会い。いかにも皆のお母さん、みたいな人で、ふくよかな身体と心地のいい声からすぐ仲良くなれた。それから｢暇なら手伝って｣と言われたのでちょくちょくと家事のお手伝いをしている。高専で衣食住を済ませている人はそこまでの人数じゃない上に、この繁忙期中は仕事も随分と減るそう。それなのに私に声をかけてくれたということは、気を遣われたのだろうか。


｢(そんな寂しそうな顔してるかな、私。ウケる、人間大好きかな？)｣


いや、人間というか、単純に慣れていないだけだ。分家にいた時でさえなんだかんだ周りに人がいたし、ここまでちゃんと1人になったことがないから慣れていない。前世ならあったはずなのに上手く思い出せないのは許してほしい、記憶があやふやなんだ。

2→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す