ハッピーエンドには遠くても (ページ5)

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ドゴッ、と自分と地面が衝突する音で目が覚める。如何も何も最悪の目覚めだ。いやそんなことより！

「な、なんでいるのどうやって入ってきたの」

独り暮らしの城にいるはずのないソイツに向かって叫ぶと、ふふんと少し得意気に鼻を鳴らした。

「俺...私は「物語終わらせ師」
その鍵の役割という名の物語を終わらせることくらい簡単なこと...と、いうのは冗談で。AA様が私と握手した瞬間に倒れたものですから、失礼ながらご自宅までお連れしました」

「いや...確かにここ私の家だけど...」

答えになっているようで答えになっていない。そもそも何で何も言ってないのに家を知ってるんだ。

「そのご様子ですと恐らく記憶にはないようですが、貴方はご自宅に着くなり自ら鍵を開け中に入られましたよ」

それはもうしっかりとした足取りで、と微笑みかけられるが、恐ろしいことに昨日の記憶が朧気である。覚えていることと言えば、この変なやつに変なことを言われた、くらいのことだ。

「改めまして、本日からAA様の専属終わらせ師として着かせていただきます。AA様を主人公とした物語が御伽噺のように美しい結末を迎えAA様の物語が後世に語られるよう」
「あのさ、敬ってくれるのはいいんだけどいちいちフルネームで呼ばなくていいよ、面倒くさいし」

口角を上げながら自慢気に話を進めていたところに思わず割って入ってしまった。自分の名前を都度長々と呼ばれては、話しづらくて仕方がない。

「では何てお呼びすれば？」

自分で考えた流暢な台詞運びを止められたことが不服だったのか、先ほどより少しだけ拗ねたような声色で尋ねられる。何と、って言われてもな...

「普通にAで良いよ。様もいらない。様付けされるような人間じゃないし」

「わかりました、A」

「うわっ、それもそれで何か...で、その専属？物語終わらせ師？って、いったい何をしてくれるわけ？」

昨日の記憶が薄いので、説明されたような気がするあれやこれやも当然脳内から抜けていた。改めて目の前の存在に問いかけると、やっと聞いてくれた！と言いながら姿勢を少しだけ正した。