階級・甲の癸さん拾弐

549話 ページ42

時透「どんな人だったの、その人。」



そう聞かれ、腕を組みながら答える。



『んー、「シバく」「殴る」「潰す」とかが口癖な口の悪い人でしたね。』



時透「最悪だね。」



『特におうちゃんに対して言うんですよね、時々殴られてるの見た。』



時透「暴力兄。」



『初対面で小石投げてきた貴方が言えるか？？』



そう言いながら少し窓の外を見る。



『…ほんと口悪いし、意地悪だし、何かと人の事悪く言うし、加虐心強いし、すぐ手が出るし…。

そのくせして、自分より人のこと考えて、人のためなら自分も犠牲に出来て…優しくて、かっこよくて、ノリ良くて、面白くて…。

ほんっと腹が立つくらい、良い兄でしたよ。』



僕が雨、おうちゃんが虹、煌先輩が大空…そして帆兄が雲。



時透「…癸は、その人のことが好きだったの？」



『好きでしたよー、良い兄でした。』



時透「そうじゃなくて…恋愛感情なんじゃない？」



…突然指摘されたその言葉に、思わず身体が固まる。



『んなわけ。』



時透「そう言う風に思えたけど。」



…好き…好きかぁ…。



『…確かに僕は、帆兄が好きでしたね。』



時透「ふーん。」



『でも、帆兄は僕のこと妹としか思ってなかったし、それに…』



…ああ、何で小石さんにこんなことを言っているの？



『帆兄は、おうちゃんのことが好きでしたから。』



…馬鹿なのかな、僕は。



言うべきじゃないことくらい、知ってるのに。

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