階級・甲の癸さん拾弐

523話　不死川side ページ16

不死川「怖くねェから此方来い。」



そういうものの、光の通っていない目には恐怖しか浮かんでいなくて。



…恐怖と怯え…なのか？



…こいつ小せえ時に何があったんだよ…。



そんなことを考えていると、癸は突然話し出した。



『…ごめんなさい、』



不死川「…は？」



『ちゃんとやる…ちゃんとやります、ちゃんとやりますから…。

勉強も運動も頑張ります、愛想良くします、家のことやります、取り柄持てるように頑張ります…だから…そんな目で見ないでください…ごめんなさい…。』



…何かあったんだろう、ってのも…それが結構辛いことなんだろうってのも分かってた。



…こんな小せえ時からこいつは何を背負ってたんだ？



不死川「おい。」



『ﾋﾞｸｯ…ごめんなさい…』



不死川「謝るなァ、お前は何も悪いことしてねェだろォが。」



そう言うと、俺のことを見ながら首を傾げてくる。



んﾞんﾞんﾞ



不死川「ほら、何もねェから此方来い、大丈夫だ。」



そう言いながら腕を広げると、少し迷った後にゆっくりと近付いてくる。



近付いてきた癸を引っ張り抱き上げると、驚いた顔をする。



不死川「行くぞォ。」



『…母が、知らない人について行ったらダメって…』



不死川「あー…お前の母親とは知り合いだァ、俺から言っておく。」



『…怒られませんか…？』



…こいつをこうさせたのは、こいつの母親なのか。



不死川「怒られねェよ。」



そう言いながら頭を撫でると、少しほっとしたのか崩したように笑う。



クソ…可愛い…

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