階級・甲の癸さん拾弐

541話　桜花side ページ34

桜花「取り柄がないと言われれば、絵で、作文で、詩で、周りから認められるほどの才能を発揮した。

でも親からしたらそれは全て「出来ていないから」のものらしくて。

いくら頑張っても褒められず…「小さい頃はいい子だったのに」で終わらされる。

いい子な子どもを、小さい頃から居ない存在のように扱うはずがないのにね…Aは必死に認められようとした。

それでも母親が愛を向けるのは、自分の思い通りに育った兄や妹。

…顔もいいし、黒髪に黒目で…母に似たその二人は、愛されていたらしいよ…でも、望まれた勉強や運動…それらが一番出来ていたのは…Aだった。

それでも何か理由を付けてはAを罵り…決して認めようとなんてしなかった。

Aは何を言われても、どれだけ嫌われても尚…家族を嫌わず、愛されたくて…認められたくてずっと頑張っていたんだよ。

…でも、極めつけは…母親がAに放った一言なんだよね。」



宇髄「一言？」



桜花「生まれてくるのがお前だと分かっていれば生まなかったのに。」



…あくまでこれは私の推測だけど…人並みとは違う髪色に目の色…そして何事も吸収力が早い…そんなAのことを、気味悪く感じていたんじゃないかとさえ思える。



桜花「…まあ…幼い頃のこと、と言ったらこんな感じになるのかなぁ。」



話し終えれば、みんなが暗い顔をしていて。



…そりゃあそうか、いつも元気そうに見えていた存在から…こんな過去が出てくるなんて思わない。



それでも知っておいてよ。



あの子が信じたあなた達だから、知っておいてよ。

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