階級・甲の癸さん拾弐

537話　伊黒side ページ30

『…蛇のお兄さん、』



伊黒「伊黒だ。伊黒小芭内。」



そう言うと、頭を置いた俺の手を小さな両手で掴み…にこりと微笑んだ。



『小芭内さん、大好き。』



……………！？！？！？！？！？



落ち着け、落ち着くんだ、これはあれだ、子ども特有の誰でも好きというアレだ、いや子どもは誰にでも好きと言ったりするのか…？



混乱する頭を落ち着けようと手を離そうとするが、きゅっと掴んでいる癸の手を振り払うことは出来ない。



『私小芭内さんみたいな人と大きくなったらお付き合いしたいなぁ…。』



待てやめろ、これ以上は俺がおかしくなる、いや既におかしくなってはいるが、頼むからこれ以上は勘弁してくれ。



『見つかるかなぁ…。』



少し寂しそうに目を伏せながら言う癸に、答える言葉を考える。



…が、考える頭とは裏腹に…口からは勝手に言葉が出ていて。



伊黒「大きくなったら俺がお前の嫁ぎ先になってやる。」



『…嫁ぎ先？』



伊黒「大きくなったら俺の所へ来い、俺がお前のそう言う相手になってやる。」



考えてもみれば、かなり凄いことを言っていた気がする。



『うん！小芭内さん好き！』



…いくら子どもの頃とは言え、癸にこれを言われているという事実が、やばい。



自分の語彙力の低下を感じながら、もう一度癸の頭を撫でる。



そうすれば目を細めて笑うものだから…可愛くて仕方がない。



伊黒「…このまま育てばいいんだがな、」



『？？？』



伊黒「何でもない。」

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