12 ページ12
撮影は、滞りなく無事に終えた。
事の発端となった女性スタッフたちは、
カンさんの手回しにより事務所の上役に引き取られた。
私たちも一旦事務所に戻って、
代表に経緯を報告。
パンPD「火傷は大丈夫ですか？」
と眉を下げて心配してくれた代表。
『平気です。
昔から不測の事態には慣れっこなので』
あっけらかんとそう答えると
パンPD「どうか、無理だけはしないで」
と、さっきよりも悲しそうな表情を見せた。
メンバーの皆さんは、次のインタビューの仕事へ。
私はオンライン授業があり会議室へ。
別れ際、カンさんに
カン「今日は家まで送ります。
勝手に帰ったら家まで押しかけますから
そのつもりで」
と脅しをかけられてしまった。
オンライン授業は、今日は2時間。
「かなり流暢に話せてますね！」
「あ、その発音！前よりずっといいです！」
先生、今日はやけに褒めてくれるなあ。
そんなことを考えていたら
授業もあっという間に終わり、
私は静かな会議室に
ポツンと座っていることに悲しさを覚えた。
火傷が今さらになってズキズキ痛む。
走り回ったせいで靴擦れもできているし。
もう、なんで今さら泣きたくなるのよ。
あんな嫌がらせ、日本でもあったでしょ。
そう言い聞かせようとすればするほど、
目頭は熱くなるばかりだった。
SG「おい」
ドキッとして顔を上げると
そこにはユンギさんがいて。
ため息をついてから、私の隣に腰かけた。
SG「なに泣いてんだよ…」
『泣いてません』
SG「泣いてるだろ。思いっきり」
『泣いてないってば…』
やば。思わずため口をきいてしまった。
でも、ユンギさんは小さく笑っている。
SG「日本、帰りたいとか思わねーの？」
『帰るところがないので』
SG「両親とか、いるだろ」
『いません。
両親はだいぶ前に二人とも亡くなりました』
ユンギさんは謝るでも驚くでもなく、
「そうか」といって私の頭を一回だけ撫でた。
SG「お前のこと、信用ならないって思ってたけど。
仲良くなれそうだな。俺ら」
敬遠してたくせに。
信用できないって思ってたくせに…。
この男は一旦なんだんだ急に！！
頭にきて一言言ってやろうと顔を上げると、
ユンギさんはもう隣にいなくて、
会議室の扉を手前に勢いよく引いていた。
「「「「「「うわああッッ！！」」」」」」
他のメンバーがドミノ倒し式に
会議室の中へなだれ込んできた。
決して目を合わせようとしない彼らを見て、
私は、声を出して笑ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みこち(プロフ) - ぱぴこ(元AUS)さん» コメントありがとうございます！仕事が忙しくなかなか更新ができていませんが、長い目で見守っていていただけると幸いです！ (2021年7月2日 21時) (
レス) id: dae6f90cd4 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(元AUS)(プロフ) - 続きとてもとても楽しみにしています！！！ (2021年7月2日 19時) (レス) id: 246b4ca496 (このIDを非表示/違反報告)
a0906uw(プロフ) - 美海(ﾐｳ)さん» コメントありがとうございます！見入ってしまうなんてとても嬉しいです！これからも頑張りますので、引き続きお楽しみ頂けますと幸いです！ (2021年6月20日 15時) (レス) id: 206d05cf3f (このIDを非表示/違反報告)
美海(ﾐｳ)(プロフ) - すごく見入ってしまうお話で、めちゃめちゃ愛読してます！これからも楽しみにしてるので、頑張ってください！ (2021年6月20日 12時) (レス) id: daf6e76b56 (このIDを非表示/違反報告)
a0906uw(プロフ) - ゆっこさん» コメントありがとうございます！初めてコメント頂けて嬉しいです（泣）知識不足で色々と読みにくさもあると思いますが、完結までなんとか頑張ります！ (2021年6月19日 20時) (レス) id: 206d05cf3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みこち | 作成日時：2021年6月16日 12時
