犬猿の仲【Fischer's】

26 ページ26

・









諒が部屋を出たっきり帰ってこない。








まさかナースステーションの場所がわからなくて迷ってる？








諒は方向音痴だから一理あるかな？








そんなことより、今日の諒いつもよりかっこいいかも。








笑顔も可愛いし最高！








待っている間ずっと考えるのは諒のこと。








いつもは髪の毛セットしたりしないのにセットしたりしちゃって








いつもすればもっとモテるのに。








あ、でもかっこいい諒は独り占めしたいからこれは本人に言わないようにしよう。








でも日記には書いてあげようかな。








諒がモテないのも不服だから。








なんてずっと諒の事を考えていると








諒が看護師さんを連れてやって来た。








「遅いよ、絹張諒」








シ「あー、迷った」








「本当に方向音痴だね」








そう言いかけてやめた。








諒の目は少し赤くなっていて








遅くなったのはナースステーションの場所がわからなかったからじゃないってすぐにわかったから。








…元気なふりをすることが必ず良いって訳でもないのかも。








…私、諒のこと無意識のうちに傷付けてるのかな？








シ「お前もっとオシャレしろよ」








ネガティブ思考になってしまった私をすぐに立て直してくれるのはいつも諒。








「うるさいなー、動ける格好って考えたらこれしかなかったんだよー」








シ「まあ、まだ短パン履いてないだけましだな」








「なんでよー、また醜い足出すなとか言うわけ？」








ほら、いつも通り。








シ「ちげーよ」








諒は私をひょいと抱き上げ車椅子に座らせた。







シ「くだらねえ話してねえでさっさと行こうぜ」







車椅子に酸素ボンベを付け酸素チューブからきちんと酸素が出ている事を確認した後







諒は私の車椅子を押し、私達は病室を後にした。








今日が終わってしまったらきっと、もっともっと体調が悪くなってしまうような気がするから








今日は最後の告白を貴方に捧げよう。

27→←25

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す