俺が殺した。【Fischer's】

♭ ページ43

・









「わー、綺麗だね」









入り口近くの鰯だらけの水槽をかれこれ10分くらい眺めている彼女。









普通なら鰯の水槽なんてほとんど目に止めないで









アザラシとかペンギンとかがいるところに行くものなんだろうけど









俺の彼女は一味違う。









モ「美味しそうだね」









そして魚を見てこんな事を言う俺も一味違うのかも知れない。









「多分野生の鰯の方が美味しいよ」









モ「あ、でも見て。あの先頭のやつ脂乗ってそう」









「あ、本当だね」









こんなバカみたいな会話を普通にできる女の子は俺の周りで彼女しかいない。









モ「…そろそろ行こうか」









「そうだね、ここで1時間くらい潰してももったいないよね」









モ「それはもったいなさすぎるよ」









隣で笑う彼女がすごく愛しい。









「ヒラメだ。ブサイクな顔してるなー君は」









水槽の魚に向かって楽しそうに話しかける彼女は









俺にとっての宝物で









「でもヒラメってちょっとモトキくんに似てるかも」









不敵に笑う彼女は少しだけ小悪魔だ。









モ「えー、俺こんなにブサイクなの？」









「違うよ、何考えてるかわからないところがモトキくんみたい」









モ「俺だったらサメとかが良かった」









「モトキくんは他のお魚さん食べられないよ。優しいから」









モ「じゃあジンベイザメは？お魚食べないよ？」









「あんなにモトキくん大きくなれないよ」









モ「じゃあ俺はやっぱり」









「ヒラメだねえ」









モ「ヒラメかなあ」









クスッと顔を見合わせて笑うのは









俺らの昔からの癖。









「Aは…そうだなあ…これそっくり」









「ウミガメ？」









モ「おっとりしてるから」









「えー、それなら絶対モトキくんだよ」









モ「俺多すぎない？」









「モトキくん基本魚みたいだもん」









モ「じゃあここには俺の仲間がいっぱいだね」









「そうだね、モトキくんばっかり」









わー、これもモトキくんだ！と楽しそうに笑う彼女を見ていると









ついつられて笑ってしまうのだった。

♭→←♭

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す