ラムネ【Fischer's】~Episode2~

43 ページ43

・








り「ぱぱ」






シ「すまん、また後でな」






り「ぱぱー！」






泣き叫ぶ諒太を抱っこする。






あ「パパ今忙しいから後で構ってもらおうね」






シ「ちょっと待ってな」






事務所を辞め






結婚してからというものの






諒はこちらが不安になるほど多忙で






今までより早く起きて






今までより色んなところに行くようになり






今までよりパソコンに向かう回数が増え






それと反対に筋トレの時間が減っていった。






シ「あー、走りに行きてえな」






ごめんね、諒。







貴方の自由な時間を奪ってしまっている。







撮影と編集の合間に諒太の子守りをする







それが今の諒の1日のルーティン。







もちろん二人の時間なんてある訳なくて







寂しいな、なんて思ったり思わなかったり。







シ「なあ、A」







編集をしていた貴方が声をかける。







あ「ん？」







シ「結婚式、挙げような」







貴方のその一言で







その笑顔で







たったそれだけで







あ「うん！」






シ「なんだよ、急に明るくなって」






あ「んーん、別に」






心は弾むのです。






シ「でもその前に走りに行く






筋肉落ちてきたんだよなあ






あ、諒太とも遊ばねえとな」






あ「私のことも忘れないでね」






シ「忘れてねえよ」






そう笑いかけてパソコンと向き合う諒と






背中合わせで座り






シ「ん？どうした？」






あ「ちょっと充電みたいな？」






シ「おー、そうか」






諒のあたたかさを感じる。






部屋にはカタカタとキーボードを打つ音






手元には可愛い諒太の寝顔






シ「…愛してるからな」






耳元には愛しい諒の低くて優しい声






あ「私も愛してる」







せわしなくもゆっくり流れる時間にそっと身を任せた。

44→←42

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す