ラムネ【Fischer's】

29 ページ29

・







荷物を詰め込み





カメラを詰め込み






大きなキャリーバッグを引いて空港へと向かう。






ン「お、Aちゃんも揃った」






シ「じゃ、行くか」






あ「うん」






飛行機の席の隣は諒。






あ「ごめんね、誕生日祝えなくて」






シ「俺も祝えなかったからおあいこ」






あ「そうだね」






モ「なんか二人とも暗くない？」






シ「んなことねーよ、な？」






あ「うん」






嘘つき。顔が引きつってるよ。






ン「それにしてもシルクロードの日だからアメリカ行くなんてよく考えたね」






シ「だろ？俺が王の日だから一日でも長く過ごさねえと」






モ「早く終わらないかな」






シ「お前、俺は王だぞ。退位権は庶民にはねえ」





モ「うわ、本当に王様っぽい」






3人で楽しそうに笑うのを私はじっと見ていた。






ン「Aちゃん具合悪いの？」






あ「んーん、大丈夫」






楽しまなきゃ。






そしてこの中途半端な関係を少し変えなきゃ。






夏のようにラブラブにならなきゃ。






そう思えば思うほど焦って






諒の手を握った。






シ「どうした？」






心配そうにこちらを見る諒。






あ「ちょっとね」






シ「あ、飛行機怖いのか？」






あ「…うん」






シ「可愛いやつだな」






そう言って強く手を握り返してくれた。






本当は違うけれど、手を握れるならそれでもいいかなと思った。

30→←28

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す