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ほら、おいで、と優しくエスコートをしてくれるシルクの隣に横になる。
「なんか緊張する」
「俺も」
「シルクの匂いする。シルク自身はお酒臭いけど」
「酒飲んだからなー」
「そうだねー」
喋っていないと気が狂いそうだったが、会話というものは途切れてしまうもので、無言の時間が続いてしまう。
「シルクとこんなに一緒にいるの初めてかも」
とうとう無言が耐えられなくなり、話を切り出した。
「そうだな。付き合ってから5年間何もなかったからな」
「よく続いてるよね」
「キスもしたことねえしな」
「うん。キスくらいしたかったな」
冗談交じりに言ったその言葉は、彼にとっては真剣な物として捉えられてしまった。
「…する?」
「そんな感じでするもんじゃないでしょ」
特に期待もせず真っ暗な部屋の天井を眺めながら話を続けていた。天井というのはこんなに高く感じるものであっただろうか。
「そうだな。でも今しなかったらきっとずっとしないと思うぞ」
「それは嫌だなー」
「じゃあこっち向いて」
低くなる彼の声に、身を任せてみても良いかな、と思った。いや、身を任せていたいと思ったんだ。
うん、と呟き体の向きをシルクの方へと変える。
真っ暗でほとんど何も見えない中、唇に柔らかい感触がする。これが諒とのキス、か。
「寝てキスってやりづれえ」
「そうだね」
「初キスの感想がやりづらいって俺ららしいな」
私達は照れ隠しをする様に話し続けた。
「ロマンチックのかけらもないんですけど、シルクさん」
「じゃあさ」
不満げな発言をした私の思いを察してか、ごそごそと動く音がする。
「これでどうよ」
次の瞬間、諒は仰向けに寝る私の上に覆い被さるようにしてまたキスをした。
「…暗くてよかった」
本当に、暗くて…良かった。
「照れてんだろ。俺には丸見え」
「シルクには何も隠せないね」
「2人の時は諒って呼べよ」
「うん、諒。大好き」
暗さに慣れた目がしっかりと諒を捉える。それがまた愛しくて、次は私からキスをした。
その日私達は過ごすには遅すぎる2人の夜を過ごしたのだった。
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花梨 - 楽しみにしてます!! (2018年11月6日 18時) (レス) id: e6157cc2f4 (このIDを非表示/違反報告)
橘雫(プロフ) - 花梨さん» ありがとうございます!色々と修正してもっとキュンキュンして頂けるような小説にしていきますので、お楽しみに! (2018年10月6日 22時) (レス) id: 1c9cad39f6 (このIDを非表示/違反報告)
花梨 - 最高すぎです!文才が神すぎです。終始きゅんきゅんでした。こういう感じのガンガン書いてください!めっちゃよみます!フィッシャーズ最高!!! (2018年10月2日 21時) (レス) id: e4eb9fe5a5 (このIDを非表示/違反報告)
橘雫(プロフ) - 書き直しを始めました。急ピッチで進めているため、誤字等あるかもしれません。その場合はご指定いただけると嬉しいです。 (2018年9月25日 15時) (レス) id: 1c9cad39f6 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - すごいですね!最初からこういうのにしようって考えてたんですね!?素晴らしい!! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 2870e13e2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:橘雫 | 作成日時:2017年4月17日 19時