〔３〕 ページ37
.
『わざわざありがとうございました』
受け取った袋を開くと、柔軟剤だろうか？
ふわんとフローラルのいい香りがした。
一世『あのっ！』
少しだけ声が裏返ってしまって、カナサシくんは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
……あぁ、かわいい。
母性本能をくすぐるタイプだ、この子。
なんて勝手に分析してみた。
一世『えっと、あの……お礼、させてください』
『え？お礼なんて…そんな、大丈夫です』
お礼なんて言われても、たかだかタオルを貸しただけ。
そもそもタオルなんてあげたつもりでいたのに、洗濯して、わざわざここまで持って来てもらって。
むしろ、悪いことをしたなと申し訳なくなる。
一世『いや、でも……』
それでも彼は引き下がってくれなくて、なかなか頑固な子なのかなと思った。
それと同時に気がついたこと。
彼はうちの高校で話題になるほどのイケメンくん。
周りには好奇の目で私たちを見つめる人がたくさんいた。
道の真ん中で繰り広げている私も悪いんだけど。
だって、こんなの見てくださいって言ってるようなものだ。
でも、このまま注目を浴び続けるのはいやで……
『……わかりました。じゃあ、また今度お願いします』
一世『本当ですか！やったぁ』
彼は嬉しそうに顔をほころばせて、右手で小さくガッツポーズをつくっている。
大人びた印象を受けていたけど、喜ぶ姿はまだまだ幼さ残る中学生だった。
それからLINEを交換する。
スマホの画面には、新しく友達の欄に追加された彼の名前。
“金指一世”って書くんだ。
名前からも彼の品の良さが漂っている。
一世『また今日の夜に連絡します』
『あ、はい』
一世『すみません。これから塾なのでお先に失礼します』
行儀よく頭を下げた彼は、私の帰り道とは反対方向に歩いて行ってしまった。
嵐のようにやって来て過ぎ去った彼と、
置いてきぼりを食らった私。
少女漫画みたいな展開に頭がついていかなくて、今の一連の流れは全部夢だったかのようにも思えた。
でもその夜。
〔 こんばんは。〕
そんな書き出して始まった文。
〔今日は突然訪ねてしまってごめんなさい。
でもお話しできて嬉しかったです。〕
本当に届いたLINEに、これは夢じゃないんだってそう思った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1075人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
年上彼氏 - 意気地なしシンドロームってなんとなくですが、セクゾの名脇役入ってますか? (2020年6月12日 19時) (
レス) id: 865e89e5c1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望 - 秘め事は、どこから見れますか？ログインすればいいんでしょうか…？ (2020年5月6日 0時) (レス) id: aa68e5a62c (このIDを非表示/違反報告)
riyona(プロフ) - 匿名希望さん» 秘め事は5月中パスワードを外しています。ご自由にご覧ください。 (2018年5月26日 20時) (レス) id: 5a9baba37b (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望 - ログインしてないのでメッセージ遅れないです。返信待ってます。 (2018年5月26日 18時) (レス) id: 65034c8742 (このIDを非表示/違反報告)
riyona(プロフ) - 匿名希望さん» ボードからご連絡いただけますでしょうか？誰もが見れる場でお伝えしてはパスワードの意味がありません。「メッセージ」でお送りいたしますので、ご理解ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。 (2018年5月26日 6時) (レス) id: 5a9baba37b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りゅりゅ
| 作者ホームページ：https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09
作成日時：2018年2月19日 13時
