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「無理やり引っ張られたから手は痛いし、こんな場所連れて来られるし…。私は作ちゃんみたいにエスパーじゃないから、ちゃんと言ってくれなきゃ作ちゃんが何考えてるかわかんないっ!」
ひと息で言ったせいで息が切れて、肩を揺らしながら大きく息を吸った。
まだ1日も経っていないのに、どうしてまた私はこんな風になってしまったんだろう。
再会して、想いは伝わって成就したはずなのに…
理由も何も言わないで1人で勝手に決めて進んでいく彼に、いつかまたひとり置いていかれてしまうんじゃないかと私は臆病な心に支配されていた。
それは自分で自分が嫌になるほど。
でも、吐き出した言葉はすべて本心なのもまた事実だった。
「ねぇ、Aちゃん。俺ね、今もあのアパート住んでるんだよ」
「なんでだと思う?」とそう問いた彼は、きちんと結ばれていた唇を柔らかく緩めて微笑む。
その表情は温かくて、冷たく縮こまっていた私の心に陽が差し込むようだった。
1歩、また1歩と近づくほどにその表情は柔らかくなっているような気がして、
「俺がずっとAちゃんが忘れられなくて、ずっとAちゃんのこと思ってたから」
私が答えるよりも先に自分で答えると、彼は「ふふっ、すっごく未練がましいでしょ?」と言いながら私に向かってまっすぐに左手を伸ばした。
「ほら、帰ろ?Aちゃん」
彼の左手に右手を重ねると、私よりもずっと大きくて綺麗な長い指が絡む。
繋がっている右手にきゅっと力を込めると、同じように握り返されて心がまた温かくなる。
手を繋いで、同じ歩幅で歩いている。
彼のことが好きで、好きで、好きで、
なぜだろう。
想いが溢れて泣きたくなった。
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作者名:りゅりゅ | 作者ホームページ:https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09
作成日時:2019年1月13日 6時