48 ページ48
.
瑞稀くんと話した日。
あれからずっと考えていた。
頭の片隅に追いやろうとしても、そんなことできなくて。
自分がどうしたいのか。どうするべきなのか。
ずっと、ずっと、考えていた。
「結婚する…」
私だってもう子どもじゃない。
……いつまでも子どものままじゃいられない。
「……って。今度会ったらそう言おうって、そう言うことになるんだろうなって…ずっと思ってた」
そんなことはわかっているのに、もう止まれなかった。
相手だってちゃんといたんだよ？
私には勿体ないくらい素敵な人で、結婚の話だって出ていて…
それなのに、気づいたらそんなもの全部捨てていた。
無償の愛を注いでくれる存在を手放して、きっと彼といれば手に入れられたであろう幸せ全部を捨てて。
それでも私はもう後悔したくなかった。
作ちゃんが私のことどう思っているか知らないけど、そんなことわかんないけど。
もしかしたらどこかで誰かと恋に落ちて、私ではない誰かを1番に想っているのかもしれないけど。
それでも、ただ彼に自分の気持ちを伝えたかった。
もう言わずに後悔したくないから。
もし作ちゃんが私のこと好きじゃないとしても振り向かせてやるって、そんな覚悟だったの。
「好き…っ、」
溢れた想いは声になる。
気づくのが遅くて言えなかった二文字を、今日やっと彼に伝えた。
「作ちゃんが…っ、好きっ…っ」
頬を濡らす雫は次第に増えて、彼の表情は涙の中で滲んで見えない。
コツコツ…と近づく革靴の音。
「もういつから好きなのかわからないくらいずっと…作ちゃんが…す…っ、」
言葉が途中で途切れたのは、
「やっとだ……」
誰よりも好きなその人に抱きしめられたから。
「やっと俺のことだけ考えてるAちゃんのこと抱きしめられた」
「さくちゃ…んっ、……っ」
「好きだよ。Aちゃんが好き」
「作ちゃん…っ、さくちゃ…っん、」
そこにいることを確かめるみたいに、何度も何度も愛しい人の名前を呼んだ。
その度に彼は背中に回す腕に力を込めたり、優しく頭を撫でてくれたりする。
どこからか聞こえる鐘の音。
あの日は花火の音だった＿＿
作ちゃんとの始まりだった“あの日”を思い出しながら、私は彼の腕の中でその音を聴いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HiHiJets」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
の - 凄く感動しました。作ちゃんがもう作ちゃんで場面が想像できました。瑞稀くんが結婚するって言った時は泣いてしまいました。片想いって本当にしんどいです。作ちゃん最後は報われてよかったです。久しぶりにこんな胸が痛くなりました。 (2021年8月31日 23時) (
レス) id: 2c22fbd9c9 (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - これの作間くんがあったら是非読みたいです！！！ (2021年3月6日 8時) (レス) id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりー - 今更感想すみません。最後めちゃめちゃ泣いたし井上担なのにすごく幸せな気持ちになりました……読んでよかったです！！ (2019年12月4日 1時) (レス) id: 533c7622c3 (このIDを非表示/違反報告)
じ ゅ き * - 呼んでて涙出てきちゃいました!! これからも作品楽しみにしてますっ (2019年10月24日 19時) (レス) id: 3ad5a89366 (このIDを非表示/違反報告)
ニャニャコ - めちゃくちゃ良かった！ (2019年8月24日 15時) (レス) id: 6881cb58fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りゅりゅ
| 作者ホームページ：https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09
作成日時：2018年11月19日 11時
