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《久々にご飯行こ。新年会》
作ちゃんからそんな連絡が来たのは、年を越して三賀日も終えた冬休み最終日。
指定されたお店はいつも通りあの洋風居酒屋だった。
例のごとく作ちゃんは先にお店に入っていて、案内されたテーブル席には私の好きな料理がいくつか並んでいる。
本当はずっと聞きたかった。
華乃ちゃんに告白されたの?って。
付き合うの?って。
ずっと気になってたけど切り出せなくて、そんな勇気なくて、
「ほんと遅刻なんて最悪。インターンだよ?しかも初日」
自分のバカ話をする。
……その方が楽だった。
いつものように私が一方的に喋り続けて、それに作ちゃんが笑ってくれる。
その“いつも通り”の空間が心地よくて、久し振りで、変わらないことに私は安心する。
「Aちゃんってほんと間が悪いよね。昔から大事な日に限って寝坊するし、好きな人は告白する前に友達の彼氏になるし」
「作ちゃんっ!」
たしかに私はいつも大事な日に限って寝坊するし、瑞稀くんは紬の彼氏になったけど、余計なお世話だ。
特に最後のひとことは必要ない。
いつだって彼はひとこと余計だ。
「そうかもしれないけど作ちゃんには言われたくない」
それに間の悪さは作ちゃんだって言えたものじゃない。
「作ちゃんだって間が悪いでしょ!入試の日に風邪ひかなかったらもっといい大学行けてたのに」
「それはもうしょうがないやつだから。でもいいじゃん。おかげでAちゃんと同じ大学なんだし」
たしかにあの日作ちゃんが風邪をひかなかったら、同じ大学には行けなくて、こうやって一緒に過ごすこともなかったんだろう。
瑞稀くんのように疎遠になっていたのかもしれない。
私の第1志望だったこの大学が、作ちゃんにとっては滑り止めだったという悲しい現実はあるけど、それにはあえて目を伏せておく。
「人生なにがあるか分からないものだね」
「なんか作ちゃんおじさんみたい」
「なんでよ」
「だってなんか達観してる」
「なんだそれ(笑)」って笑う作ちゃんにつられるように私も笑う。
笑って、飲んで、食べて、また笑って…
2時間なんてあっという間で、もうお店を出る時間。
「これから私の家で二次会ね」
「まだ飲むの?」
「だって作ちゃん飲んでないでしょ?」
まだ飲み足りなくて「行くよ」って彼の腕を掴むと、そのままぐいぐいと引っ張るようにして歩いた。
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の - 凄く感動しました。作ちゃんがもう作ちゃんで場面が想像できました。瑞稀くんが結婚するって言った時は泣いてしまいました。片想いって本当にしんどいです。作ちゃん最後は報われてよかったです。久しぶりにこんな胸が痛くなりました。 (2021年8月31日 23時) (レス) id: 2c22fbd9c9 (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - これの作間くんがあったら是非読みたいです!!! (2021年3月6日 8時) (レス) id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりー - 今更感想すみません。最後めちゃめちゃ泣いたし井上担なのにすごく幸せな気持ちになりました……読んでよかったです!! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 533c7622c3 (このIDを非表示/違反報告)
じ ゅ き * - 呼んでて涙出てきちゃいました!! これからも作品楽しみにしてますっ (2019年10月24日 19時) (レス) id: 3ad5a89366 (このIDを非表示/違反報告)
ニャニャコ - めちゃくちゃ良かった! (2019年8月24日 15時) (レス) id: 6881cb58fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りゅりゅ | 作者ホームページ:https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09
作成日時:2018年11月19日 11時