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今日最後の講義を終えて体育館へ行くと、今までずっとサークル皆勤賞だった人の姿がない。
「作ちゃんは?」
彼と同じ学部の子に尋ねると「作間今日は休むってー」なんて言葉が返ってくる。
「なんかゼミ忙しいらしいよ」
「そっか」
鞄からスマホを取り出してメッセージアプリを起動させた。
彼とのトーク画面を開くけど、そんな連絡私にはない。
いや、別になくてもいいんだけど…
ああ…もう。
せっかく消えたと思ったモヤっとしたものが、また心に広がる。
その日から作ちゃんはサークルを休むことが多くなった。
由真たちがいるからサークルもつまらないわけじゃない。
バドミントンしながらわーきゃー言って、休憩してお喋りして。それなりに楽しんでる。
それでもやっぱり心はずっと
「あ、作間くん。またあの子といるじゃん」
「…そうだね」
こんな時にはより一層その靄が濃くなった_
サークルで会わなくなった代わりによく見かけるようになった、作ちゃんと女の子が一緒にいる姿。
女の子は小鳥遊華乃ちゃんで、作ちゃんとは同じ学部でたしかゼミも同じだった気がする。
サークルは私たちと同じバトサーだから顔と名前は知ってるけど、どちらかと言えば派手な子たちのグループであまり関わりはない。
……なにあれ。
あーあ、あんなデレデレした顔で笑っちゃって。
鼻の下伸びてるよ?
たしかに華乃ちゃんは可愛いけど、あんなに締まりない顔して……ほんとバカみたい。
今度会ったら絶対「変態!」って言ってやる。
なんて意気込んでたのに、
「なに?なんかAちゃん機嫌悪くない?」
「別に…」
いざその場面になったらそんな言葉は出てこない。
久しぶりにサークルに来た彼はいつものように私の隣に座った。
「ゼミ」
「ん?」
「忙しいの?」
「あー…教授の実験手伝ってるからね。正しくは手伝わされてるだけど(笑)」
「ふーん、そうなんだ」
文系の私には理系のゼミも実験もさっぱりわからないから、その忙しさなんてのはもっとわからない。
「忙しい」と言われてしまうと、少し前ならなんとなしに誘えていたご飯すら誘えなくなった。
「頑張ってね」
「ん、ありがと」
その頃ちょうど私も短期だけどインターンがあって。
少しずつ2人でご飯に行く回数は減っていって、冬を迎えた頃には会うのは週に一度。
あの一緒に取った講義だけになっていた。
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の - 凄く感動しました。作ちゃんがもう作ちゃんで場面が想像できました。瑞稀くんが結婚するって言った時は泣いてしまいました。片想いって本当にしんどいです。作ちゃん最後は報われてよかったです。久しぶりにこんな胸が痛くなりました。 (2021年8月31日 23時) (レス) id: 2c22fbd9c9 (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - これの作間くんがあったら是非読みたいです!!! (2021年3月6日 8時) (レス) id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりー - 今更感想すみません。最後めちゃめちゃ泣いたし井上担なのにすごく幸せな気持ちになりました……読んでよかったです!! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 533c7622c3 (このIDを非表示/違反報告)
じ ゅ き * - 呼んでて涙出てきちゃいました!! これからも作品楽しみにしてますっ (2019年10月24日 19時) (レス) id: 3ad5a89366 (このIDを非表示/違反報告)
ニャニャコ - めちゃくちゃ良かった! (2019年8月24日 15時) (レス) id: 6881cb58fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りゅりゅ | 作者ホームページ:https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09
作成日時:2018年11月19日 11時