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「A」
名前を呼ばれて、日に焼けた腕が目の前に差し出される。
開かれた手のひらに紙を乗せると、橋本くんはそこに視線を落としてから、くしゃり…と握り潰した。
スタスタと遠ざかる足音。
近くのゴミ箱に丸めた紙を捨てた橋本くんは私のもとに戻ってくると、そのまま頭を下げる。
「ごめん」
「え？」
「気づいてあげられなくてごめん」
橋本くんは悪くない。
なに一つ悪くないのに彼は「ごめん」と頭を下げる。
「彼氏なのに、気付けなくてごめん」
「橋本くんは悪くなくて…ね？大丈夫だから謝らないで」
ゆっくりと頭を上げた彼と目があった。
それは初めて見る表情。
眉を下げて泣き出しそうな顔で私を見つめる。
……こんな顔させたくなかった
なんて、うまく隠し通せなかった自分が嫌になって。
今度は私から視線をそらした。
「Aは優しいから、きっと俺に心配かけたくないとか思ったんだろうけど…」
ぽつりぽつりと彼の口から発せられる言葉。
それはさっきまでの怖い声でも、悲しい声でもなくて、
「心配かけてよ」
優しい優しい大好きな彼の声だった。
「俺はAの彼氏なんだから」
「橋本くん…」
「ん、」っと日に焼けた腕が伸びてきて、また目の前に差し出された手のひら。
さっきと違うのはそれが左手だってこと。
「え？」
「え？って(笑)」
どうすればいいのかわからなくて顔をあげると、ケタケタと笑われてしまう。
「行こっか？」
その言葉と一緒にぎゅっと繋がれた右手は恋人繋ぎ。
そのまま運動靴に履き替えると、あと2分で開会式の時間だってことに気がついて二人で慌てる。
「間に合うかな？」
「大丈夫だよ、きっと。でもまぁ重役出勤もいいんじゃない？笑」
そうかもしれないけど、そんなことしたら目立っちゃう。
……あんまり目立つようなことをしたくないというのが本音だ。
「でもやっぱり遅刻はよくないか(笑)」って呟いた彼が私の顔を見てにっこり笑う。
「走るよ！」
「えっ、走るの！？」
「はい、行くよっ！」
「まって、えっ！？」
橋本くんに手を引かれながら走り出す。
開会前にこんなに走ることになるなんて思わなかったけど、それでもなんだか楽しくて。
さっきまでの暗い気持ちはどこかにいってしまう。
橋本くんって太陽みたい。
そんな事を思いながら、また大きく地面を蹴った。
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riyona(プロフ) - chiiさん» コメントありがとうございます！！オチはまだ決めていません。というのも優斗くんも涼くんも素敵で、決められないんです(>_<)更新はゆっくりですが、どんな結末を迎えるのか最後までお付き合いいただけるとうれしいです(*>ω<*)よろしくお願いいたしますm(_ _)m (2018年8月5日 19時) (
レス) id: 5a9baba37b (このIDを非表示/違反報告)
chii(プロフ) - 王道ってことは優斗くんオチなんですよね…？涼くんが優しくていい彼氏すぎて、このまま幸せになって欲しい〜！って思っちゃいます（；＿；）このお話ほんとに好きで毎日更新楽しみにしてます！ (2018年8月2日 21時) (レス) id: 5119b8387b (このIDを非表示/違反報告)
りと。(プロフ) - riyonaさん» 返信ありがとうございます！！まさか読んでいただけていたなんて...！本当にずっと大好きな作者さんに読んでいただけるなんて嬉しすぎます！ありがとうございます！！ (2018年7月16日 23時) (レス) id: 472c64059e (このIDを非表示/違反報告)
riyona(プロフ) - りと。さん» 感想ありがとうございます♪優斗先生ちょっぴりチャラいですが…(笑)これから王道な展開が続きます。糖度の高いお話になると思うのでお付き合いいただけると嬉しいです。そして実は私りと。さんのお話を読ませて頂いていたので、今回コメントを頂けて嬉しかったです！ (2018年7月16日 12時) (レス) id: 5a9baba37b (このIDを非表示/違反報告)
りと。(プロフ) - いつも素敵な作品をありがとうございます。りゅりゅさんのお話、毎回楽しみにしています。先生優斗、とってもカッコいいです。。これから涼くんと優斗との三角関係がどうなって行くのか、楽しみにしています！ (2018年7月13日 22時) (レス) id: 828bff7cb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りゅりゅ
| 作者ホームページ：https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09
作成日時：2018年7月5日 10時
