一般人と呪力 ページ3
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「じゃあ次は呪具禁止ね」
日も落ちかけ、情けなく肩で息をしながら目の前の男を睨みつける。もう終わりでいいだろう、圧倒的に一日でこなす量ではない特訓だ。それも初日、これが毎日続くと考えると気が遠くなりそうだ
『…も、無理…ッ゛!』
「まだ呪力使った特訓してないんだよ?軽くやったら終わりでいいから、ほらやるよ」
私の悲痛な叫びも無視され、慈悲の欠片も感じられない言葉を吐き出す五条先生。少し前までの対応とは全く違うことから、私の身を案じてくれてはいるのだろう。ただ少しだけスパルタ過ぎる気がするが
軋む体に鞭を打ち、フラフラとおぼつかない足元に意識を集中させる。体幹を意識して、猫背ではあるもののその場に立ち続ける。できることなら今すぐ膝を折って座り込みたい、横になりたいものだ。
「Aはさ、まだ餓鬼の力をコントロールできてない。それどころか自分の呪力の扱い方の把握すらできてないでしょ?」
『目に見えないもの扱えなんて無理です』
「まずはそれを改善しないとすぐに逝っちゃうよ、それは嫌でしょ?僕もそんなの見たくないからね」
そう言って私の頭に手を置いた。さらりと私の髪を何度か撫でると、そっと抱き寄せられる。大きな胸板にぶつかるようにして五条先生に体を預ける。ふんわりと柔軟剤のいい匂いが鼻をかすめた。
この人香水とかつけてそうなのに案外柔軟剤の匂いするんだ…
なんて回らない頭で考えていると、突然視界がぐわんと歪む
『あ、』
「呪力使わないようにって言ったのに、さっきの特訓の時点で溢れてたんだよ。まったく」
『足に力入らないんですけど、今日の特訓はこれで…』
「…まったく、手のかかる生徒だなぁ!ほら、寮戻るよ〜」
体全体の力が抜けた私を抱えて寮に向かって歩き出す五条先生。お姫様抱っこでもしてくるのかと警戒していたが、当たり前のように脇で抱え込まれた。
運びなれているのか特別重そうな様子は見せなかったが、如何せん私への負荷がでかい。
歩く度に腹部に腕が当たって痛い。情けなくぐえっと悲鳴を上げながら運ばれる姿を真希さんに見られたときは、この世のものではないかのような視線を向けられた。
「A…出荷か?」
『五条先生にいじめられた』
「嘘つかないの、特訓だよ」
「…お疲れさん、後で飲み物届けてやるよ」
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どどまる(プロフ) - 🍞さん» ありがとうございます✨スローペースの更新にはなると思いますが、楽しんで頂けるよう励みます🙌 (10月12日 19時) (レス) id: c4fbd224fc (このIDを非表示/違反報告)
🍞 - めちゃくちゃ面白いです!! これからも頑張ってください!!! (9月26日 16時) (レス) id: 5f87212f07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どどまる | 作成日時:2023年9月12日 5時