w/r/w/r/d さん達のBL集！ぱぁと7

β.魔術書にないはずの呪文 utsha【2】 ページ9

shaside

……だからもう、切り替えようと思ってたのに。
いつも相手を取っかえ引っ変えで、あいつにとっては恋はするものではなくて武器なんだ
から。
バビルスに入る前からずっとあいつは女を口説きまくってたけど、それでも最終的には俺
の隣に戻ってきてくれる。
それだけでよかったのに。
それ以上なんか、望むつもりもなかったのに。
俺らしくもない弱気な選択だけど、これまでの関係を変に壊すことは思った以上に怖いこ
とだったから。
俺があいつに「絶対振り向かせてやるからな！」なんて、本気になってるって分かったら、
あいつはもう俺の隣には戻ってきてくれないかもしれない。
そう思うと、アタックなんかできるわけがなくて。
幸い、我々師団の奴らとバカやってるときはちょっと気が紛れるし、そのままもう忘れてし
まおうって、区切りをつけてしまおうって、そう思ってた矢先だ。
なんだよ。ふざけんなよ。
なにちょっと勘違いしそうなトーンで「好きだよ」とか言ってんの。
まじで意味わからんわ。
もう一周回って腹立ってきた。
…俺は知ってる。
あいつの言う「好きだよ」は、魔術の詠唱みたいなもんだ。

あれこそが、あいつの最大の武器。
その本質は「Love」なんかとは程遠く、相手を絡めとるための恐ろしい呪文。
あいつの言うあの甘ったるい響きの「好きだよ」に、何人の女が堕とされていったか。
それでもって、大先生が女に「好きだよ」とか言ってるのを聞いたら分かってても心臓が焼
け付くように痛むから、俺にとってはあの言葉は呪いでしかない。
どの魔術書にも載ってない、あまりに強力な呪文。
それが、今度は自分自身にも向けられるようになったとか、何の嫌がらせなんだよ。
お前が変に真面目なトーンで「好きだよ」とか言うから、諦められへんやんか。
何なん？何がしたいん？
俺はどうやったらその「I like you.」を「I love you.」に変えられんの？
なぁ。
そんなことをぐるぐると考えながらぼーっと画面に映る「Now Loading…」の文字を見つ
めていると、ふいに横から頬をふにっと押された。

「なぁシャオちゃん、好きやで。」

ドクン、と心臓が妙な疼痛を伴いながら大きく鳴る。
…またか、お前。

「なに？暇やからって俺で遊ぶなや。お前のおもちゃになりにお前ん家来たんちゃうぞ。」

そう。俺はお前にそんな風に弄ばれに来たんやない。
……少しでも長く、二人だけで一緒に居たかっただけ。
それすらも許してくれへんの？

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