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「……」

「イギリスさん?」



俺が立ち止まったことが分かったのか、日本が振り返る。



「悪い、今日は上司に国民のほうの会議に出ろって言われてんだ」



嘘をまるで本当のことかのように偽って。


……全部全部、自分のためだ。



落ち込む気持ちを押し込んで、口の端を持ち上げた。



「ええと、世界会議にはご出席なさらないということで…?」



日本がかすかに首を傾げた。
イギリスには、日本が毎度真面目に会議に出席する理由がわからない。



「世界会議に意味なんてない」

「イギリスさん」



日本の声が咎めるような響きを帯びた。


……お前だってそう思うだろ?


その問い掛けを、そっと胸にしまった。
どうせどんなふうに問うたって、お前が明確な答えを返すことはない。

自分勝手に嘘をつく俺と、自分の保身のために意を表明しないお前。

結構、気が合うと思ってたんだぜ?
けどさ、多分、分かり合えねぇんだよな、俺とお前は。



「俺は会議には出れねぇ。ドイツに言っといてくれ」



……あれ?


ふと違和感を感じると同時に、え、と日本の口が動いた。

その直後、後ろから気配がする。



「何…言ってるの」



いつもよりずいぶんと掠れた声で紡がれた小さな、小さな呟き。



「…イタリア?」

「イタリア君!」



日本が目を見開いた。

そこまで愕然とした表情のお前を見るのはいつぶりだろう。

確か、どこか(・・・)の国が消失した後。日本を弟と呼び、俺を目の敵にしていたヤツ。



……だれ、だったっけか。



自分の思考にはっとした。そうだ、さっき感じた違和感はきっと──



「ねぇ、なんで?イギリスにとってアイツは、忘れちゃうほどどうでもいいの」


ぱしっ、と腕を掴まれた。日本がイタリアを慰めるように背中をたたく。

「イギリスさん。ドイツさんはもう、いないんですよ」



悲痛な響きに満ちた声を聞いても何の感情も浮かんでこなくて、日本の休養を勧める声に頷いた。

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蟻。 - 三六 月さん» すみません!うわ、今気づきました…。ご指摘、ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年12月6日 21時) (レス) @page1 id: 7989c22791 (このIDを非表示/違反報告)
三六 月(プロフ) - 初コメ失礼します!とても、面白いです。あの、ルビ振りの所が気になったんですけどしてる方以外は消した方がいいかもです...そういうものでしたらすみません!更新頑張ってください! (2022年12月6日 20時) (レス) @page2 id: c56d0b069e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蟻。 | 作者ホームページ:   
作成日時:2022年12月6日 16時

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